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VR広告は消費者の行動にどのような影響を与えるのか?

2017/05/29 11:14

VRを活用した広告には、大きなポテンシャルが秘められている。というのも、近年の消費者はリアルな「モノ」よりも「体験」を好むうえに、VRによる体験は他人とその感動をシェアしたくなるという特徴を持っているからだ。

海外メディアVRScoutは、VR広告が消費者に与える影響に関する記事を掲載した。

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「モノ」より「体験」を重視する消費者

VRテクノロジーに注目している業界のひとつに、広告業界がある。現在のVRヘッドセットの普及率を考えると、VRが直ちに広告媒体のメインストリームになることはないだろう。しかしながら、他のメディアと比べてVRは圧倒的な没入経験を消費者に提供する。そして、この「体験」こそ近年の消費者の行動を特徴づける言葉となっている。

2015年に発表された研究では、アメリカのミレニアム世代(2000年以降に成人になる1980年代以降に生まれた世代)の72%が物理的なアイテムより体験を重視しているという報告がある。この報告に従えば、例えば旅行先での思い出を友人に伝える時、ポストカードのような物理的なアイテムを見せるより、SNSにアップした画像や動画を使って「体験」をシェアしたほうが喜ばれると、いうことになろう。

実際、特別な「体験」を提供する観光業ではすでにVRを用いた広告活動の事例が存在している。以下にそうした事例を挙げていく。

Tourism Australiaの事例

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本メディアで以前に報じた事例のひとつに、オーストラリアの旅行広告でVRが活用されたことがある。

Tourism Australiaがアメリカ・ニューヨークで開催されたオーストラリアの観光イベントAustralia Dayにおいて、360度動画広告を活用したところ、観光サイトのPVが1,000万以上となった

この事例は、360度動画広告によってオーストラリアを疑似体験した結果、広告体験者が実際にオーストラリアに行きたくなった、ということを示している。

観光案内サイト「TOHOKU & TOKYO」

東京都は、海外の観光客に東北地方の魅力を知ってもらうために公式サイト「TOHOKU & TOKYO」を運営している。同サイトには、東北地方の四季を題材とした360°動画が掲載されている。

以上のような試みは、東京都という公的な機関も体験を提供するVRの広告的効果に注目していることを示している。

感染を引き起こすVR広告

「体験」を提供するVRには、さらなる広告効果がある。それは、深い没入感をもたらすVR体験は消費者に「口コミ」をさせたくなる、という効果だ。ある報告によると、VR体験したユーザーの81%がVR体験を家族や友人に話したいと思った、と答えた。

この「感染効果」は、VRが体験者の「共感」を生むことに起因していると思われる。つまり、VRヘッドセットを装着したユーザーは、深い没入感をもたらすバーチャルな光景に強く心を揺り動かされ、その光景とユーザー自身を関係づける。そして、その「共感」をほかのヒトとシェアしたいという逆らい難い欲求に駆られるのだ。

「共感装置」としてのVR

実のところ、こうしたVR体験によって「共感」を呼び起こす効果は、かなり早い時期から知られていた。例えば、「VR元年」以前の2015年、映像作家のChris Milkはプレゼンテーション・イベントTEDにおいて「なぜバーチャル・リアリティーは究極の共感装置となりうるか」と題されたプレゼンを行っている。

VRがもつ「共感装置」としての機能は、とくにジャーナリズムと親和性が高く、最近ではVRを用いたジャーナリズムは「Immersive journalism」と呼ばれている。本メディアで先日紹介したGoogleと国連が制作したシリア難民に関する没入型ウェブサイトはImmersive journalismの事例である。シリアの現実を伝えるには、見たり聞いたりするのではなく、「実際に」体験してもらうのがいちばんであろう。

もっとも、この「共感装置」としての機能は、諸刃の剣である。というのも、この機能は倫理的に問題のある事柄に関しても活用することが可能であり、場合によっては「洗脳装置」として機能することも考えられるからだ。実際、こうしたVRを「共感装置」として濫用することに警鐘を鳴らす議論が、今年のトライベッカ映画祭では行われた。

まとめると、「経験をシェア」するうえで強力なメディアであるVRは、大きな広告効果を発揮するポテンシャルを秘めている。だがそうしたVRの広告効果が発揮されるのは、一定以上のVRヘッドセットの普及が前提とされる。VR体験が「当たり前」になるまでにはもう少し時間がかかるであろうが、VRが普及したあかつきにはVR広告を制するものが(インターネット広告で世界的企業となった)「未来のGoogle」になるのかも知れない。

VR広告が消費者に与える影響に関したVRScoutの記事
https://vrscout.com/news/vr-experiences-influence-consumer-buying/

吉本幸記


千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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