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制作者へのインタビューでわかった「VRジャーナリズム」に関する7つのこと

2017/05/30 18:31

    イギリス版WIREDは、VRジャーナリズムの関係者を調査対象としたレポートを紹介した。同レポートによって判明したのは、VRジャーナリズムはほかのVRコンテンツと同様に課題が山積していることである。

    イギリス版WIREDは、VRジャーナリズムに関して調査した結果判明した7つの事柄を紹介した。

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    注目される「VRによるジャーナリズム」

    本メディアでも何度か報じているように、VRを活用してより「リアル」な報道を目指す試みがある。こうした試みの背景には、VRを使えば紙やディスプレイといった「平面的」なメディアで伝えるよりも「現場」に近い情報が届けることができるという考えがある。具体例としては、CNNが制作したVRニュースアプリ「CNNVR」、Googleと国連が共同制作した没入型ウェブサイトがある。

    イギリス版WIREDは、以上のような「VRジャーナリズム」コンテンツを制作した世界のメディア関係者20人以上にインタビューして作成されたレポート「Digital News Project 2017」を紹介した(トップ画像参照)。

    「VRジャーナリズム」に関してわかった7つのこと

    BBCと通信社ロイターの共同制作によって作成された同レポートから浮かび上がってくることは、VRジャーナリズムにはまだ課題が山積していることである。そうした課題を以下に7項目に絞って紹介する。

    VRジャーナリズムは「一発屋」?

    現在、CNN、New York Times、Guardian等世界有数のメディアがVRを活用したニュースコンテンツを制作している。そうしたコンテンツのなかには、BBC制作の「Home: A VR Spacewalk」のように多くの賞が授与されたものもある。

    しかしながら、こうしたVRコンテンツのなかには「今VRが流行っているから」という理由だけで制作されたものも多い。VRコンテンツ全般に当てはまることだが、作り手も視聴者も「興味本位」のレベルで留まっていることがしばしばなのだ。

    そうした「興味本位」にもとづいたVRニュース・コンテンツは、いずれ忘れ去られるだろう。

    「パクリ」はやめよう

    安易な興味本位でVRコンテンツに手をだした場合、やはり安易にYouTubeにアップされている360°動画を転載するケースもある。

    独自に360°動画ニュース・コンテンツを制作する場合でも、「とりあえず作れるのが360°動画だから」という理由で制作されたものが多い

    「なぜ360°動画でなければならないのか」「360°動画でしか伝えらないこととは何なのか」という批判的視点が欠如したコンテンツは、はやり忘れ去られるだろう。

    「それ」は果たしてVRなのか?

    360°動画として制作されたとしても、「360°のディスプレイで見る映像コンテンツ」で留まっているものもある。

    360°動画の醍醐味は、「360°にわたって映像が見れる」ことではなく「まるでリアルな空間にいるかのような」没入感にある

    没入感に乏しい360°動画ばかり見せられると、視聴者はいつかVRヘッドセットを装着することをうとましく思うようになるだろう。

    「共感」もほどほどに

    本メディアでも度々報じているように、360°動画はその圧倒的な没入感により視聴者の心を強く揺り動かし、その結果として「共感」を得る効果があることが知られている。

    ただ、「共感」を呼ぼうとするVRコンテンツは往々にしてシリアスなことを扱うことが多い。確かに、シリアの惨状を知ることは非常に重要であるし、「リアル」に知るためにはバーチャルに「体験」することがいちばんよい。

    しかしながら、シリアスなコンテンツばかりだと視聴者は疲れ飽きてくる。時には「明るい」共感を呼ぶコンテンツが必要なのだ。だが、こうした明るいVRニュース・コンテンツはあまりない。

    マネタイズは発展途上

    現時点では、360°動画にお金を払って視聴しようと思うユーザーは少ない。さらには、360°動画の視聴者数もまだ少ないので、広告収入を期待するのも難しい。

    次善の策として、既存ニュースメディアがテック系企業とパートナーシップを締結して、VRニュース・コンテンツを制作する例もある。例えば、New York TimesはSamsungとパートナーシップを締結している。

    しかしながら、長期的にはVRメディアが単独でマネタイズ体制を確立するのが望ましい。

    「やること」に意味がある

    難題が山積しているVRジャーナリズムではあるが、VRニュース・コンテンツを制作する自体には大きな意味がある。

    その意味とは、VRニュース・コンテンツを制作するようなメディアは最先端のテクノロジーを活用している「クール」なメディアと認知されることだ。つまり、VRジャーナリズムに取り組むことは、「メディアのブランディング」という観点から見ると、大きなメリットがある。

    すべては時間が解決?

    レポート作成に際してインタヴューを受けたドイツ・メディアDie WeltのMartin Heller氏は、VRジャーナリズムが既存のメディアと同じくらいの視聴者を獲得する時期は「2020年か2022年、もしかしたら2025年」と答えている。

    誕生したばかりのVRジャーナリズムに課題が山積しているのは、当たり前なのである。それゆえ、ほかのVRコンテンツと同じようにVRジャーナリズムも、VRが普及する過程で課題を解決して、独自の価値を確立するだろうと考えるのが自然であろう。

    VRジャーナリズムに関して調査した結果判明した7つの事柄の事柄を紹介したイギリス版WIREDの記事
    http://www.wired.co.uk/article/making-virtual-reality-journalism-reuters-report

    吉本幸記


    千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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