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VRポルノは性犯罪を抑止できるのか?

2017/06/08 17:21

カナダ・モントリオールの精神保健施設では、ペドフィリアの嫌疑がある性犯罪者の性的嗜好を調査するために、VRヘッドセットを用いた調査を実施している。VRポルノを性犯罪の抑止に活用する議論もなされている。

海外メディアGuardianは、VRポルノを使って性犯罪を抑止する研究事例を紹介する記事を掲載した。なお、以下の記事本文には一部性的な表現が含まれている。

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被験者の「内面」を明るみにする「バーチャル・プロファイリング」

カナダ・モントリオールのある「最高度のセキュリティ・レベル」の精神保健施設では、特注のVRヘッドセットを使ってある検査が行われている。

この検査の被験者は、児童に対して性的な犯罪行為を犯した性犯罪者たちだ。彼らが受けている検査とは「ペドフィリア(児童性愛者)」かどうかを判定するものだ。

「ペドフィル」かどうかをいったいどのように調べればよいのか。その答えは、バーチャルに性的な誘惑を与えて、その反応を検査することにあった。そして、「バーチャルな」性的誘惑を発生される装置としてVRヘッドセットが選ばれたのだ。

被験者は「それ」から目をそらすことはできない

被験者がVRヘッドセットを装着すると、中央に背もたれのない椅子がある小さな部屋の景色が広がる。部屋の4つの壁にはスクリーンがあり、そのスクリーンにはバーチャルな人が写されている。そのバーチャルなヒトは成人男性、成人女性、少年、児童と様々であるが、みな裸なのだ。このバーチャルなヒトは、性別や年齢の違いに加えて、髪や瞳の色、体形、さらには性器の大きさまでも変えた多くのバリエーションが存在する。

バーチャルなヒトに多くのバリエーションが存在するのは、被験者の性的嗜好を詳細に検査するために多様な「性的」誘惑を与えるためだ。

装着するVRヘッドセットにも工夫が施されている。VRヘッドセットにはアイ・トラッキング機能が実装されていて、被験者が目を逸らしたらすぐに分かるようになっている。つまり、「誘惑」から目を背けることで検査結果をねつ造することはできないのだ。

用意されたバーチャルなヒトのなかには、苦痛や恐怖の表情を浮かべているものもある。というのも、被験者が犯した罪によっては、苦痛や恐怖の表情が「誘惑」となる場合もあるからだ。

被験者の「反応」はテクノロジーで検知

以上のようなバーチャルな誘惑に対して、被験者が「反応」したがどうかをどのように調べるのか。その方法は、被験者に脳波に反応するヘッドギアを被せて、性的興奮によって発生する脳波を検知するのだ(下の画像参照)。

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この「バーチャル・プロファイル」によって得られた被験者の性的嗜好に関するデータは、被験者の社会に及ぼすリスクの測定と専門的治療に役立てられる。

同検査を率いるPatrice Renaud氏によると、「バーチャル・プロファイル」を採用した理由はふたつあると言う。ひとつは、検査環境をバーチャルに構築することによって、リアルなヒトを介在させなくても済むことだ。そして、もうひとつがVRヘッドセットを用いて「リアルな」誘惑を使えば、被験者の「ナチュラルな」反応を調べることができる、という理由である。

同検査を適切に運用すれば、誤ってペドフィルを(そうとは知らずに)社会復帰させてしまうようなことは少なくなるだろう。

VRポルノの光と闇

バーチャル・プロファイリングはすでに性犯罪を犯したヒトを対象としているが、一歩進んでVRポルノを性犯罪の抑止に使うことはできないだろうか。

例えば、ペドフィリアのような社会的には容認しがたい性的嗜好をVRポルノで満たすことによって、リアルに実行することは予防できないだろうか。

「幻想」の成就としてのVRポルノ

「高潔なペドフィル(英語では"Virtuous Pedophiles"」というペドフィルを支援する団体の設立者であるEthan Edwardsは、VRポルノこそがペドフィルを犯罪者にすることなく性的に満足させる手段であると主張している。同氏によれば、VRポルノによってペドフィルの性的欲求をバーチャルに満たすことは、法的な権利であるのだ。このことに関して、同氏は以下にようにコメントしている。

私には、バーチャルなかたちで自分の性的欲求を満たす自由があります。

そして、この自由は法的に守られるべきだと感じています。というのも、VRポルノを見たら、リアルにそのような行為に及ぶという強固な証拠はまだないのですから。

VRポルノは「悪夢」に駆り立てるのか

確かにVRポルノと性犯罪の関連性を科学的に立証する研究事例は存在しないだろう。というより、そうした研究はまだ着手されていないのかも知れない。

こうしたなか、カナダで科学捜査に携わる心理学者Michael Seto氏は、VRポルノは性的衝動をコントロールするのに役立つと信じている一方で、以下のような発言もしている。

性的衝動の抑制が弱いヒト、危険な行動をとりがちなヒト、あるいは他人に対して冷淡なヒトにとっては、ペドフィリアに関するVRポルノを体験したら、あるいは欲求を駆り立てるというネガティブな影響が出て、もしかしたらリアルな行動を助長するかも知れません

「バーチャル・プロファイル」を率いるPatrice Renaud氏もまた、VRポルノによる「幻想」の成就に慎重な立場をとっている。同氏が懸念しているのは、VRポルノによって実現する「幻想」には際限がないことだ。バーチャルと言えども例えば視聴者が「3つの性器と青い肌のモンスター」となるVRポルノを体験し続けたら、どのような影響があるかは全く未知数である。

VRポルノは、VRコンテンツのなかでも最もメインストリームになるのが近いと推定される。しかしながら、VRポルノはおろかVRコンテンツがヒトの心理にどのような影響を及すのか、まだ分からないことが多いのが現状ではないだろうか。VRの普及を真に願うのであれば、VRの効用に関する科学的調査が急務ではないだろうか。

VRポルノを使って性犯罪を抑止する研究事例を紹介したGuardianの記事
https://www.theguardian.com/technology/2017/jun/07/virtual-reality-child-sexual-abuse-pedophile-canada-research

吉本幸記


千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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