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女性がVR・AR業界に進出することを阻む壁とは何か。そして、その壁を壊す取り組み

2017/07/06 18:03

    海外メディアBuzzFeedは、女性がVR・AR業界に進出することを阻む壁に関する記事を掲載した。

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    アメリカVR・AR業界にある「暗黙の了解」

    「Voices of VR」というポッドキャストを運営し、本メディアでもしばしば参照している海外VRメディアの老舗RoadtoVRに記事を投稿しているKent Byeは、RoadtoVRと双璧をなす海外VRメディアUploadVRを運営するUploadが主催するイベントに参加した。イベント会場の入り口で、同女史はモデルとして参加しているのか、と尋ねられたと言う。VR業界のイベントに参加する女性は、たいていは日本で言うところの「イベント・コンパニオン」だからだ。

    こうしたやり取りに関して、同女史は次のようにコメントしている。

    VR業界にいる私を含めた女性に尋ねる質問はいつもこんなものです。モデルとして雇われているのかい、と。

    VR系の会社で働いている女性の多くは、開発者ではなくモデルとして雇われているようだ。Upload社もその例外ではなく、同社の前イベント・プロデューサーであったOlya Ishchukovaは、実は「Models in Tech」という会社から派遣されていたモデルでもあった。

    「Models in Tech」とは、日本で言うことろのイベント・コンパニオン派遣を主幹業務としている企業だ。ただ、日本における同業者より業務の範囲が広いようで、イベント・コンパニオンのほか、製品のデモ動画の出演者、プレゼン・イベントにおける製品のデモンストレーターなども派遣している。

    同企業の公式サイトを見ればわかるのだが、派遣可能なモデルの一覧画像を見ることができ、モデルのほとんどが容姿端麗な白人女性だ。

    そういうわけでVR業界で働く女性とは「モデルとして働いている」という「暗黙の了解」、もっと言えば偏見が蔓延しているのが現状だ。

    女性がVR・AR業界に入ることを阻む壁

    こうしたなか、VR業界に「モデルではない立場で」進出しようとする女性もいる。だが、女性の進出の前には壁が立ちはだかっているようだ。

    VRをテーマとした動画をYouTubeに投稿しているTaryn Southernは、あるVRカンファレンスでVRポルノに関する討論に女性のパネリストの参加を企画した。しかし、その討論は、ある男性の一般聴衆の妨害で頓挫してしまった。この事件について、同女史は以下のように述べている。

    私はただ、VR業界がVRポルノについてどのように考えるべきか、VRポルノ産業をどのように育てるべきか、ということについてディスカッションしたかっただけなのです。

    それなのに、ある男性からこうどなりつけられました。女どもは子供の世話でもしてろ、と。非常にショックでした。

    VR業界をはじめとして、女性が技術職で働くことに対する男性からの抵抗感がアメリカでも根強く残っているのだ。

    Women in XRの取り組み

    しかし、これまで述べたような女性がVR業界に進出する時に立ちはだかる壁を打破する試みも存在する。

    海外メディアVRScoutは、女性がVR業界に進出することを支援する団体「Women in XR」(「XR」はVR・ARをひとつの単語で表現する慣用句)の取り組みを紹介している。

    同メディアによると、アメリカのテック系企業で働く(モデルではない)女性は全体の20%であり、女子大生のたった3%だけがテック系企業で働くことを希望しているのだ。さらにスタートアップに出資するベンチャー・キャピタル系投資家における女性の割合は8%である。

    その一方で、(数は少ないであろうが)女性がCEOを務めるテック系企業は、男性がCEOの企業に比べて平均して30%多く利益を出しているという報告がある。この報告にもとづけば、女性のテック系企業への進出を阻むのは、テック業界にとっての損失であると言える。

    「Women in XR」は、以上のような現状を打破すべく、VR・AR業界において女性投資家と女性起業家を結びつけることを目的として設立された。

    Women in XRの設立イベントの様子

    Women in XRの設立イベントの様子

    同団体では、経験ある女性起業家が創業と企業文化の形成に関して、助言する機会を設けている。その助言は、助言を受けた女性起業家だけではなく、会社のメンバー全員に浸透するように努める。そしてこの助言は、社員の雇用や予算の編成といった重要な決定に関しても行われるのだ。

    VR・AR業界が女性に対して真に門戸を開くためには、女性開発者を養成するだけではなく、「Women in XR」のように多数の女性起業家の誕生を促すことも不可欠であろう。日本においても、同団体が行っているような取り組みを期待したい。

    女性がVR・AR業界に進出することを阻む壁に関する記事を掲載したBuzzFeedの記事
    https://www.buzzfeed.com/doree/women-in-vr?utm_term=.orgQdYgV3#.jo5VR14ze

    「Women in XR」を紹介したVRScoutの記事
    https://vrscout.com/news/future-is-female-alter-reality/

    吉本幸記


    千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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