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自閉症に伴う感覚過敏の辛さを体験できるVR映像 - VR Inside

自閉症に伴う感覚過敏の辛さを体験できるVR映像

     

感覚過敏な自閉症の子供たちが見る世界

感覚過敏な自閉症の子供たちが見る世界は刺激が過剰になっている

一般に、健康な大人同士であれば相手も同じように世界を認識していると考えて日々を過ごしている。だが、実際には自分が見ているものを相手も同じように見ているとは限らない。

同じ場面を見ても知識、宗教、文化といったバックグラウンドが異なれば感じることは変わってくるし、味や音楽に対する好みは人によって違う。それどころか、刺激に対する感じ方がそのものが異なる可能性すらあるのだ。

感覚には個人差があるが、比較するのが難しい。自分が人と違うことに本人さえ気付いていないこともあり得る。

The National Autistic Society(イギリスの国立自閉症協会)は、YouTubeに公開したVR映像によって「感覚過敏」と呼ばれる症状を持つ自閉症の子供たちが見る世界のイメージを伝えている。

感覚過敏な子供たち

警告:この映像には、光の点滅や突然の大きな音が含まれている

感覚過敏

感覚過敏という言葉に聞き覚えがない読者も多いだろうが、字面から意味は想像できるのではないだろうか。視覚や聴覚といった感覚が敏感すぎるのが感覚過敏だ。

ただし、単に耳が良いとか、神経質だという個性で済ませられるレベルではない。もちろん程度の差はあるのだが、刺激に敏感すぎて日常生活で苦痛を感じたり、人が多い場所に行けないといった状態になってしまうこともある。ときには不登校や自傷行為に感覚過敏のような感覚の偏りが関係していることもあるという。

逆に感覚が鈍い(感覚鈍麻)こともあり、いずれも発達障害との関係が指摘されている。自閉症スペクトラム障害では感覚の過敏や鈍麻が現れることが多いようだ。

刺激に溢れた社会

現代の消費社会は、消費者の五感に訴える情報で溢れている。特にこの映像で示されたショッピングモールのような商業施設では、様々な音、光、色、そして匂いが一度に襲ってくる。強い刺激によって興奮状態になることで財布の紐が緩むとも言われているので、施設側の狙いとしては間違っていない。

その刺激を受け続ければ誰でも疲れてしまうものだが、感覚が過敏な子供たちにとっては特に辛い場所だ。

彼らがどんな風に感じているかを理解するのは難しいが、最新のVR技術がその助けとして使われている。他人の感覚を完全に再現することはできないが、この映像は自閉症の人々の実際の体験に基いて作られたものだ。視聴することで、イメージは感じられるのではないだろうか。

動画はYouTubeにアップロードされているのでブラウザから表示することも可能だが、よりリアルに体験するためにはスマートフォンとCardboardゴーグル、そしてヘッドホンを使うことが推奨されている。

The National Autistic Societyのサイトでも警告が記載されているように、映像には光や音による刺激が含まれている。短い映像ではあるが、こうした要素が苦手なユーザが視聴すると激しいゲームや映画と同様に乗り物酔いのような症状が出る可能性もあるので注意が必要だ。念のため、VRで視聴する前に2Dで動画を見てみるのが良いかもしれない。

他者の感覚を知るVR

VRで車椅子の扱いを学ぶ

車椅子の扱いを学べるVRコンテンツも作られている

VR技術を使えば、目と耳を使って自分とは違う感じ方を体験できる。組み合わせるデバイスによっては、肌に触れる圧力や温度を再現することもできるようになるだろう。これらの特徴は、VRゲームを没入感の高いものにしてくれるだけではない。

車椅子利用者の視点

今月の初めに紹介したVRコンテンツでは、専用の車椅子とVRヘッドセットを使って車椅子で街中を移動する体験ができる。

事故などで初めて車椅子を使うことになった患者が扱いの練習に使うことができるのはもちろん、車椅子を使ったことがない・使う予定もないというユーザが車椅子ユーザの見ている世界を知るためにも利用できるコンテンツだ。バリアフリーを考える建築物のデザイナーや、看護・介護する側を目指す学生などが利用するのも有効だろう。

車椅子の利用者には街がどのように見えるのか、何が危険で何が不便なのかを知ることで、意識が変わるはずだ。

 

今回The National Autistic Societyが制作したVR映像も、特に感覚過敏の子供を持つ保護者や子供たちの世話をする保育士・教師といった人々が彼らの気持ちを理解するための助けとなるだろう。VRによる体験は、言葉で学ぶ以上に感覚を伝えることができる方法だ。

身近に患者がいなくても、こうした症状を持つ人が大勢いると知っていれば障害への見方が変わってくるかもしれない。

 

参照元サイト名:The National Autistic Society
URL:http://www.autism.org.uk/VR

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。