アンリアルエンジンとは?VRゲームでよく使われるゲームエンジンを詳しく紹介!
2021/04/20 16:20
ゲームをしていて「アンリアルエンジン(Unreal Engine)」というロゴをみたことが1度はあるはず。
VRゲームでも利用する作品が多く、VR界隈でもおなじみのゲームエンジンです。
「アンリアルエンジンを使ってるからグラフィックが綺麗なはず」
など、近年ではどのゲームエンジンを使っているかがゲームのクオリティの判断要素にもなりました。
そんな「アンリアルエンジン」はどのようなものなのか、詳しく紹介します。
そもそもゲームエンジンって何?
ゲームエンジンとはさっくり言ってしまうと、ゲーム制作を効率化するためのソフトウェアのことです。
1つのゲームを制作するとき、
・グラフィックやサウンドを表現するプログラム
・コントローラーの入力を感知するプログラム
・当たり判定など物理処理を行うプログラム
・オブジェクトなどを配置するためのプログラム
などなど数多くのシステムを必要とします。
そのため、プログラミングだけでゲームをゼロから制作しようとすると、高度な専門知識が要求され、とんでもない労力と時間がかかります。
そこで、ゲーム開発に必要なプログラム一式を揃えたソフトウェア、つまりゲームエンジンが登場しました。
ゲームエンジンを使うことによって、本来ならば膨大な作業が必要になるゲーム制作が大幅に効率化することができるようになります。
そのため、大規模なゲームスタジオだけでなく個人や小規模チームでもクオリティの高いゲームを制作することが可能になりました。
アンリアルエンジンとは?
アンリアルエンジン(Unreal Engine)は、「フォートナイト」で有名なEpic Gamesによって開発されたゲームエンジンです。
同社が1998年に発表したFPSゲーム「Unreal」と「Unreal Tournament」を製作するために開発されました。
3DCGを用いた高画質で高品質なグラフィックを実現する表現力とNintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One、PCやVRにさえ対応するマルチプラットフォームに定評があります。
例えばPC版を制作したデータでそのままPS4にも簡単に移植可能であるという高レベルな移植も可能です。
そのため、
「最も成功したビデオゲームエンジン」
とギネスブックに掲載されるほど幅広く活用されています。
もう一つの主力ゲームエンジンの「Unity」がスマホゲームで使われているのに対し、アンリアルエンジンはPCゲームやコンシューマーゲームの制作に利用されています。
その理由が「ブループリント」と呼ばれるオリジナル機能です。
「ブループリント」では「十字キーの上を押す」、「前進する」といった入力や動作、反応などの要素が用意されており、これらをマウス操作で組み合わせることで複雑なゲームシステムを直感的に作り上げることができます。
開発の経緯から海外のFPSゲーム用のゲームエンジンというイメージが強かったものの、世代を重ねるうちに徐々に日本のゲームでも採用されるようになりました。
特に4世代目のアンリアルエンジン4(UE4)は国産ゲーム開発で広利用されています。
進化を続けているアンリアルエンジンですが、2016年にはVRエディタ機能も搭載されました。
使い勝手の良さとグラフィック性能の高さから、数多くのハイクオリティなVRゲームやコンテンツがアンリアルエンジンから制作されています。
ゲーム以外にも利用されている
アンリアルエンジンはゲーム以外にも様々な分野で活躍しているのも特徴です。
リアルなグラフィックを実現することができるため、軍や警察、航空業界では訓練などに使用するシミュレーターとして利用されています。
また、建築業や製造業では設計データをもとにした3DCGモデルを制作する際にアンリアルエンジンを利用する例が増えています。
BMWは設計から生産計画、販売に至るまで、各部門を通して Unreal Engine を活用していることで有名です。
VR、Unreal Engine、物理ハードウェアを組み合わせた 複合現実ラボを使うことで、世界中のデザイナーやエンジニアが仮想環境の中で
・車両設計・デザイン
・製造過程の効率性・安全性
を検討することができます。
さらに、顧客向けにもバーチャルショーケースを使うことによって、購入前に新車の乗り心地や運転を試してもらうこともできるようになりました。
映像分野で活躍するアンリアルエンジン
しかし、アンリアルエンジンが大活躍している分野といえばなんといっても映像制作です。
近年では映画の監督が自らのビジョンやプランをスタッフや役者に説明したり、実際にセットやロケをする前のシミュレーションをするための「プリビズ」や「バーチャル・プロダクション」として利用されるのがほとんどです。
例えば、2019年に公開された「ジョン・ウィック:パラベラム」では、UE4を使ってVRセットを構築したことで話題になりました。
ガラスの部屋で行われた最終決戦の複雑なスタントシークエンスを成功させるために、VRセットで俳優とスタントマンに格闘の振り付けを確認させるのに使われたものです。
また、このVRセットでは格闘シーンの最も効果的なショットを撮影するためにカメラワークの検討も行われています。
近年ではロケやセットのコストを削減するための「バーチャルセット」での利用も話題です。
「スター・ウォーズ」シリーズ初の実写ドラマ「マンダロリアン」では、LEDスクリーンにアンリアルエンジンで制作した背景映像を映し実写撮影を行っています。
この手法をとることによって、宇宙船内部や未知の惑星などSFならではの風景でのリアルタイム実写撮影が可能となりました。
日本国内の映像作品でもアンリアルエンジンは活用されるようになっています。
2019年に日米で放映されたアニメ「ノー・ガンズ・ライフ」では背景の作成にアンリアルエンジンが利用され話題となりました。
短い制作期間の中で原作のサイバーパンク風の世界観を忠実に再現するために、使い勝手の良さとクオリティが高いグラフィックを両立するUE4が選ばれたとのことです。
また、同じく2019年の「ガールズ&パンツァー最終章」の第2話では、ジャングル戦の背景の制作にUE4が採用されています。
同シリーズでは過去にジャングルの背景制作に非常に時間と労力をかけたことから、アニメーション制作と相性が良いゲームエンジンであるUE4によって制作が行われました。
>>Unreal Engine 4でより複雑な演出を実現『ガールズ&パンツァー 最終章』[CGWorld.jp]
アンリアルエンジンの軌跡
アンリアルエンジンは1998年に初代のアンリアルエンジン(UE1)が発表されて以来進化を続け、現在では2020年に発表されたアンリアルエンジン5(UE5)が最新バージョンとなっています。
これまでのアンリアルエンジン各バージョンについて簡単に振り返っていきましょう。
Unreal Engine1
初代アンリアルエンジンは「Unreal」と「Unreal Tournament」を制作するために開発されました。
1つのエンジンで
・ゲームのレンダリング処理
・コリジョン探索
・AI
・グラフィック
・ネットワーク
・ファイルシステム管理
を統合し管理できるようにすることでゲーム開発を効率的に行うことができます。
Unreal Engine2
2002年の「Unreal Tournament 2003」のためにバージョンアップが図られたことで第2世代アンリアルエンジンが登場しました。
初代に搭載された要素が技術の進歩に合わせて更新、改良されたものです。
さらに、当時主流のゲームコンソールである
・PlayStation 2
・ニンテンドー ゲームキューブ
・Xbox
に対応するようになっています。
Unreal Engine3
第3世代のアンリアルエンジンでは
・鏡面反射や正確な半影の柔らかな影などを表現する次世代の高品位ライティング
・大規模な群集シミュレーション
などをはじめとする更新が行われました。
マイクロソフトのDirectX(Windows、Xbox 360のバージョン9-11)に準拠して作られ、同様に
PlayStation 3やMac OS X、Linux、そしてiOSやAndroid、Adobe Flash Player 11のStage 3D
PlayStation Vita、Wii Uなどで使われているOpenGL
も使用していることでも知られています。
Unreal Engine4
UE4は2015年以降(将来の全てのアップデートも含めて)無償化され、登録や使用するにあたってロイヤリティを支払う必要がなくなったことでユーザーを一気に伸ばしました。
PCハードウェアとコンソールの第8世代を主軸に置いており、AAAクラスのゲーム開発に最適化されたグラフィックの描画能力を最大の特徴としています。
そのため、ゲームだけでなくその他の分野のクリエイターもUE4を使って高品質なグラフィックを作成することができるようになりました。
Unreal Engine5
最新バージョンのアンリアルエンジン5(UE5)は2020年5月にPlayStation5実機を使った「Lumen in the Land of Nanite」のプレイ映像とともに発表されました。
目玉となる2つのコア技術として「Nanite」と「Lumen」が明らかにされています。
Naniteとは仮想化ジオメトリ技術と呼ばれる技術で、数億ポリゴンを超える映画品質なモデルを直接UE5にインポートできるようにするものです。
そのため、クリエイターはポリゴン数やメモリの制限を気にすることなく、スムーズに細密なデートを扱うことができるようになります。
Lumenは「完全動的なグローバルイルミネーション(GI)技術」とされるもので、自然な光と影を表現できるようにする技術です。
・時間経過とともに変わる太陽光
・天井や壁に開いた穴から入ってくる光
・懐中電灯の点灯
などこれまで手間がかかった光の描写を効率的に行うことができます。
この2つのほかにも、
・リアルな音の反響を表現する技術
・水しぶきをリアルに表現する流体シミュレーション
といった技術が実装される予定です。
また、PlayStation 5、Xbox Series X/S、PlayStation 4、Xbox One、Nintendo Switch、PC、Mac、iOS、Androidに対応することになっています。
あの有名ゲームも?アンリアルエンジンで作られたゲーム
すでに紹介してきたようにアンリアルエンジンは数多くのゲーム開発で採用されているゲームエンジンです。
その中から主要な作品を4つ見ていきましょう。
「あれでも使われてたの!?」
とアンリアルエンジンを身近に感じることができるでしょう。
フォートナイト
「フォートナイト」はアンリアルエンジンを開発したEpic Gamesによるバトルロイヤルゲームです。
eスポーツの競技としてTVで特集されることも多い、バトルロイヤルゲームの代表的な作品といえます。
バトル要素のほかにクラフト要素も強く文字通りフィールド内の全てを使って勝利を目指すことになります。
他のバトルロイヤルゲームと比較して残酷描写が少ないことから、小学生向け雑誌でも取り上げられるほどプレイヤーの裾野が広いゲームです。
PUBG
「フォートナイト」がポップなバトルロイヤルゲームとするなら、「PUBG」はリアル志向なバトルロイヤルゲームの代表ということができます。
バトルロイヤルゲームというジャンルを確立させた立役者でもあり、1日の同時接続数が300万人以上を記録したこともある人気ゲームです。
砂漠から森林、廃墟など様々なエリアがある孤島を舞台にしていますが、それらのどれもアンリアルエンジンだからこそ実現できるリアリティで表現されています。
サマーレッスン
PSVR初期の傑作と言われている「サマーレッスン」でもアンリアルエンジンが採用されています。
「彼女は本当に、そこにいる。」をコンセプトに
細やかな動きでリアルに再現されたしぐさや挙動
実在感のある表情
を高画質で高品質なグラフィック処理が可能なアンリアルエンジンによって実現しました。
キャラクターだけでなく、夏のあるひと時を表現する部屋や背景の色味などアンリアルエンジンの描画力が存分に発揮されています。
エースコンバット7 スカイズ・アンノウン
人気シリーズ「エースコンバット」の7作目になる「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」もアンリアルエンジンの恩恵を受けた作品の一つです。
PS4版にはPSVRを用いたVR対応コンテンツが収録されていますが、シリーズの特徴であるクオリティの高いグラフィックをVR版でも実現しています。
航空業界でフライトシミュレーターにも使われるアンリアルエンジンならではの、本当に戦闘機に乗っているかのようなプレイ体験が可能です。
まとめ
アンリアルエンジンを使うことで、本来複雑なプログラミングが必要になるゲーム開発でも直感的な操作でクオリティが高いゲームを制作ができます。
ゲームだけでなく高精度なグラフィックを描画するのにも向いていて、映像制作やVRコンテンツ制作でもできる万能選手です。
もともと学生は無償で利用できたものの、現在では誰でも無償で導入することができるようになりました。
ゲーム開発はもちろんですが、VRコンテンツの制作に興味がある人は気軽に導入してみてもいいかもしれません。
今後さらに進化していくであろうアンリアルエンジンがどのような世界を表現してくれるのか楽しみですね。
参考サイト:Unreal Engine公式サイト
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