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スマートグラス開発の難しさ

2017/06/15 17:53

AR技術は、スマートフォンアプリから専用のスマートグラスへと進んでいく。だが、ARデバイスの開発にはいくつかの難しい条件があるのも事実だ。アナリストのJon Peddieは、2020年までにそれらの条件をクリアするデバイスが開発できると考えている。

ARインターフェイスを使う女性

VR技術と同じく映像を利用した技術で、ここ数年注目されているAR。ゲームでの利用が主となっているVRと異なり、AR技術はむしろ商業や工業の分野に大きな可能性があるという。

ARもその成長が楽しみな技術なのだが、ARデバイスにはVRデバイスと違った開発の難しさも存在するという。グラフィック業界のパイオニアが、スマートグラスとそのディスプレイが克服しなければならない課題を指摘した。

スマートグラス開発の困難

サイクリスト用のスマートグラス「Raptor」

サイクリスト用のスマートグラス「Raptor

AR技術を利用したスマートフォンアプリの場合、ディスプレイはスマートフォンの一般的な液晶画面をそのまま使用する。スマートフォンのカメラで撮影した映像にARオブジェクトを重ねることで現実の拡張を実現しているのだ。

この方法でもARは実現できるが、手でスマートフォンを持っているとできる作業は制限されてしまう。次に注目されているのは、両手を空けた状態でAR機能を利用できるスマートグラスだ。

しかし、スマートグラスは次のような特徴を備えていなければならず、開発は困難なものになると考えられている。

視認性

昼間に屋外でスマートフォンを使って、画面が暗くて見にくいと感じた経験はないだろうか。最近のスマートフォンは設定次第でかなりバックライトを明るくすることもできるが、直射日光の当たる場所では画面が暗くて見えにくいこともある。

スマートグラスのように身に着けられるARデバイスは屋外で使われることも考えられるため、明るい場所でもはっきり見えるように明るく表示することができなければならない。

だが、常に屋外で使うとも限らない。室内での作業時にスマートグラスを使うことも考えられる。ユーザが眩しく感じてしまわないように、画面の明るさを落としても見やすさを維持できるディスプレイであるべきだ。

位置の正確性

スマートグラスは、ユーザを特定の場所に案内するような用途にも適している。だが、位置情報の精度が低ければユーザは全く関係のないところに連れて行かれてしまうかもしれない。

ユーザを正しく案内するためには、現実の情報とズレないようにARオブジェクトを表示しなければらない。

スマートフォンのGPSだと、機種によっては開けた場所でも通り1本くらいの誤差が出ることもある。スマートグラスで現在地が大きくズレるようなら、利用できる機能が大きく制限されてしまう。

透明度の調整

スマートグラスを使う場合、目の前にARオブジェクトが表示される。透明度が高すぎると表示を見逃してしまう可能性があるが、不透明なオブジェクトが表示されれば向こうが見えなくなってしまってARの意味がない。

使用する環境によっては、ARオブジェクトで周囲が見えにくくなると危険ということもある。

ユーザの好み、用途、周囲の明るさなどの環境に合わせてAR表示の透明度を調整できなければならない。

奥行き

平面のディスプレイに映像を表示するのと違って、スマートグラスでは奥行きのある現実にオブジェクトを重ねて表示する。近くにあるものにも、遠くにあるものにも正しくAR情報を組み合わせるためには奥行きの認識が必要だ。

快適なAR表示のためにデバイスは奥行きを認識し、それに合わせて表示を調整する機能を持つ必要がある。

応答時間

ディスプレイの応答時間が短いに越したことはないが、どの程度の応答速度が必要かは用途によって異なる。ゆっくりした映像を見るディスプレイと、プレイヤーが素早く反応する必要のあるゲーム用のディスプレイでは遅延の感じ方が異なるはずだ。

研究によれば、VRの場合遅延は40ミリ秒以下であるべきだとされている。遅延が大きすぎる場合、VR酔いを起こしやすくなるかもしれないからだ。

だが、ARはさらに低いレイテンシを要求する。ユーザが頭を動かしたときに違和感を与えないためには、5ミリ秒以下であることが理想的だという。多くの研究者は、10ミリ秒がARで許容できる遅延の限界ではないかと考えているようだ。

Peddieの期待

VuzixのBlade 3000

VuzixのBlade 3000ARグラス

アナリストのJon Peddieは、IEEEの記事で上記のようなARデバイスとARディスプレイの開発者が直面する課題を指摘している。しかし、彼は同時に近い将来この条件を満たすデバイスが登場すると考えてもいる。

簡単に作れないだけであって、作ることができないわけではないというのが彼の立場だ。

「2020年までに、消費者向け製品としてARグラスを提供できるだけの品質を達成できると信じています。その製品は悪い意味で目立つ、オタクっぽいデザインのガジェットではなく、スマートな眼鏡になります」

 

エンターテイメント用途に適している反面、周囲が見えなくなるという欠点も抱えているVRと異なり、ARは多くの場面で利用できる。優れたデバイスとアプリケーションが開発されれば、日常生活や業務を大きく変える可能性がある。

だが、開発が難しいのも事実だ。ディスプレイの性能や現在地の認識精度など、いずれも厳しい条件を満たさなければならない。

Peddieの予言する2020年まではあと3年しかないが、テクノロジーは本当の意味でスマートなARグラスを作り出すことができるだろうか。

 

参照元サイト名:IEEE Computing Now
URL:https://www.computer.org/portal/web/chasing-pixels-finding-gems/content?g=54397843&type=article&urlTitle=seeing-in-augmented-reality-is-hard

参照元サイト名:Graphic Speak
URL:http://gfxspeak.com/2017/06/12/seeing-augmented-reality/

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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