【JVSR3】「日本型アーケードVR」の特徴は「ホスピタリティ」?JVSR3セッションレポート!
2017年10月12日、グリー株式会社と一般社団法人VRコンソーシアムが主催、日経BPが共催するイベント「Japan VR Summit 3」(JVRS3)が東京ビッグサイトで開催された。
当日開催されたセッションの中から、本記事では「日本型アーケードVRは世界に通用するのか」を取り上げ、その内容をレポートする。
日本におけるアーケードVR施設運営の現状をはじめ、日本型ロケーションベースVRの特徴や、課題について、パネリストが活発に語り合い、非常に密度の濃いセッションとなった。国内のロケーションベースVR施設の将来を考える上で示唆に富む内容だったので、ここで紹介したい。
登壇者紹介
当日のセッション登壇者は以下の通り。
(写真左から順に)
株式会社バンダイナムコエンターテイメント AM事業部エグゼクティブプロデューサー:小山 順一郎氏
CAセガジョイポリス株式会社 執行役員・施設事業推進部本部長:速水 和彦氏
パネリストによる事業紹介
セッションはパネリストによる自社のアーケードVR事業と、事業の将来的な方向性についての紹介から始まった。
石井氏はアドワードが運営を手がける渋谷の「VR PARK TOKYO」を紹介。かつてのゲームセンターのようなアイデアと技術のイノベーションの「場」を作りたいと考え、VRアトラクションのテーマパークを創出したと語った。また同施設の来場者は現在5万人、年明けには10万人を超える見込みだと語り、堅調に来場者数が増加している様子を伺わせた。
小山氏はバンダイナムコが運営する「VR ZONE SHINJUKU」を紹介した。「VR ZONE」はバンダイナムコが保有するIPコンテンツによるラインアップも魅力的だが、「インスタ映え」を意識したフードメニューやプロジェクトマッピングなどの演出も注目されている。また来場者の属性的な特徴として、高単価設定のためか学生よりも会社員が多く訪れる点、またカップルで訪れる客が全体の35%を占めている点などを挙げた。
速水氏はCAセガが中国を中心に展開するVRアーケード施設「JOY POLIS」の事業展開を紹介した。同社がアトラクション販売を手掛けていること、また「Singularity」などのロケーションVRゲームを次々に展開していることなどに触れ、今後さらなるコンテンツ拡充をおこなっていく用意があると語った。
日本型アーケードVRの特徴とは?
次に安藤氏によって、「日本のロケーションベースVRの課題とは何か」というテーマが設定されパネリストが各々の意見を出し合った。
その最中で明らかになったのは日本のアーケードVRが海外と比較すると、様々な点で特徴があるということだった。
特徴1:ホスピタリティ
その1つが施設における「ホスピタリティ」の質だ。
パネリストらによれば、日本のアーケードVR施設において、客に提供するサポートは高いクオリティにあるのだという。
たとえば小山氏によれば「VRZONE」はアルバイトであっても、最低限の接客が可能な程度に英語と中国語を扱えるようにしたいと考えているという。石井氏も英語に堪能な人間はわずかだが、スタッフ全員が施設案内できる程度の英語力は備えるように指導していると語る。
しかし速水氏によると、たとえば中国では英語を扱えるスタッフを揃えようとはしない。多くの言語に対応しようとするサービス精神は、日本のアーケードVRに固有のものだと指摘する。
また日本では、客が装着するVRヘッドセットの脱着もスタッフがサポートすることが多い。しかしやはり、他国でこのようなサポートを提供することは比較的珍しいようだ。
こうした日本的な「ホスピタリティ」は、確かに「質」それ自体については評価すべきであろう。
セッション中に小山氏は、アーケードVRを台湾で展開する企業の社長が来日した際、アーケード施設のサービスに非常に感銘を受けた、というエピソードを紹介した。このことはサービスの質の高さが他国と比較しても高水準になることを象徴するものだ。
一方で高水準のサービスを提供するには、大量のスタッフが必要となり、そのため人件費がかさんでしまうという問題がある。
仮にヘッドセット着脱を客に完全に一任できれば、コスト削減を達成し、問題を解消することが可能になるかも知れない。
特徴2:「13歳問題」
また安藤氏は「13歳問題」の存在を指摘する。
日本のアーケードVR施設では、13歳以下の子供に過剰な負荷がかかることを懸念し、VRの仕様に制限をかけるようガイドラインが設定されている。
もちろんVRには「酔い」の問題などもあるので、遊ぶ上で健康に十分配慮することは大切だ。しかしその一方でこのガイドラインが生む弊害は大きい。問題は「13歳以下の層をアーケードVRに取り込めない」ということだけに留まらない。子連れのファミリー層がアーケードVR施設に来ないのだ。
速水氏によれば、こうしたガイドラインは海外ではほとんど存在しない。子供たちはアーケードVRを大人と同様に楽しんでいる。
安藤氏はこうした海外の事例が日本でも知られるようになれば、「13歳問題」も自然に解消していくのではないかと見ている。ただし、それまでしばらくの間、日本のアーケードVRでは子連れのファミリーにリーチできない状況が続きそうだ。
運営のコスト高、スピード感の不足が課題か
セッションではこのほかにも日本型アーケードVRの特徴として、ニンジャマスクを客に装着させるなどの「衛生面の徹底さ」なども挙げられていた。
最後には「日本のアーケードVRにはオリジナリティがある」、「IPコンテンツが豊富で強みとなっている」などの理由から「日本型アーケードVRは世界に通用する」と結論付けられた。ただし課題点として、上述したように現状ではサービス提供のためにコストがかかりすぎること、またコンテンツやアトラクションを導入する際のスピード感の不足なども指摘されていた。
日本のアーケードVRがこれらの課題を克服して成長していくことができるか。今後に注目だ。、
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