【ホログラムの原理】何もないところに映像が出現する仕組みとは?
何もない空間にあたかも存在するかのように表示させる「ホログラム」。
xR技術が身近になるにつれて、「ホログラム」を使った映像表現に触れる機会が多くなっていました。
一体どのような仕組みや原理で、何もない空間に映像を表示させているのでしょうか?
ホログラムの仕組みや原理、またその種類など詳しく調べてみました。
ホログラムとは?
ホログラムというと、スターウォーズなどのSF映画でよく登場する、”空間に浮かぶ立体映像”を想像するのではないでしょうか。
実は正確に言うと、”空間に浮かぶ立体映像”はホログラムではなく、「ホログラムっぽい映像」というのが
ホログラムとは「映像が立体的に記録・再生されている媒体」のことを指します。
具体的には、
- 紙幣
- クレジットカード
- ビックリマンシール
などでよく見る、光を受けるとキラキラと虹色に輝く部分のことを”ホログラム”と呼びます。
ホログラムの仕組みと種類
では、「本当のホログラム」と「ホログラムっぽい映像」にどのような違いがあるのでしょうか。
まず、ホログラムというのは「光の振幅と波長、位相」を記録したものです。
- ・光の振幅:光の強さ
- ・光の波長:光の色
- ・光の位相:光がやってくる方向
通常の映像は物体に反射した光(物体光)の振幅と波長のみを記録するため、平面の映像として記録されます。
対して、ホログラムは物体光だけではなく、「参照光」というもう一つの光を利用します。
物体光と参照光が干渉し合った結果生じる干渉縞を記録することで、ホログラム映像に必要な光の強さ、光の色、光がやってくる方向をすべて記録することができます。
また、ホログラム映像を適切に記録するためには3種類の光をすべて記録できる高度な機材が必要となります。
ホログラム的な映像を表現する場合には、機材のコストがかからない別の映像表現方法をとるのが一般的です。
そのため、普段私たちがホログラムと呼んでいる「何もない空間に映し出される立体映像」は、あくまでも「ホログラムの代用的な映像」ということになります。
本来のホログラムとホログラム的な映像とで仕組みにどのような違いがあるのか、代表的な3つについて見ていきましょう。
1.ペッパーズゴースト型
ホログラムとして最も一般的な手法といえるのが、「ペッパーズゴースト」という視覚トリックを応用したものです。
初音ミクやPerfumeのコンサートで使われ、ホログラム的な映像表現として注目を集めました。
ペッパーズゴーストとは、1800年代に舞台演劇で使われていた技術で、別の部屋にいる人に光を当て、ガラスなどの反射を利用してその人の姿をステージ上に投影し、ステージ上にその人がいるかのように見せることができます。
とても古典的な技術ですが、東京ディズニーランドの「ホーンテッドマンション」でも効果的に使われている現役バリバリな演出方法です。
最近では、DMM VR THEATERでガラスの代わりに透過型の特殊なスクリーンを使って、アイドルやアニメキャラクター、VTuberなど多彩なステージが行われています。
2.霧(水蒸気)のスクリーン
ペッパーズゴーストはスクリーンを使うため、厳密には「何もない空間に映像を投影する」訳ではありません。
そこで、よりホログラムっぽい映像を表現するために考案されたのが水蒸気を活用する方法です。
例えば、「Displair」という表示技術は、水蒸気を霧のように吹き出し、噴き出した霧をスクリーンの代わりとして映像を投影する方法を採用しています。
水蒸気スクリーンに触れることによって映像を変化させたり、動かすことができるのが特徴です。
ペッパーズゴーストや水蒸気スクリーンは、どちらも映像を投影するものを必要とします。
そのため、
・見る方向によってキレイに見えないことがある
・映像を投影する方向も制限される
・そもそも立体映像ではない
という難点があり、近年では新しい発想でのホログラム映像の表現方法の開発が行われています。
3.網膜ディスプレイ
現在新しいホログラム技術として注目されているのが、「網膜ディスプレイ」です。
網膜ディスプレイとは、ARの応用として開発されているものでCGで作った映像を人間の網膜に直接結像させる技術のことをいいます。
網膜に立体のCGデータを直接投影させるため、見る角度や投影する方向に関係なくキレイな立体映像を表現することが可能です。
また、網膜に直接映像を投射することで、ユーザーが近視や遠視など視力矯正が必要な場合でも、鮮明でくっきりした映像を見ることができるというメリットもあります。
ただし、網膜ディスプレイは網膜に直接映写するという仕組みのため、ARヘッドセット、ARグラスを装着する必要があり、ペッパーゴーストなどと比べるとややコストがかかるのがデメリットです。
網膜ディスプレイはいくつかの異なるアプローチから開発が進んでいます。代表的なものを2つご紹介していきます。
1.網膜投影型(マクスウェル視光学系)
網膜投影型ディスプレイは「マクスウェル視」という仕組みを利用するものです。
ピンホールカメラのように、光線を瞳孔の中心に集中させて網膜上に投影する方法になります。
瞳孔の中心のみに光が通るため、目のピント調節機能(近視、遠視、老眼)に関係なく常に鮮明な映像を表現することが可能です。
しかし、映像をキレイに見るために目を動かせる範囲があまり広くないなどの難点があります。
このような難点を解消する取り組みが、筑波大学の落合陽一氏が中心となって開発している「Air Mount Retinal Projector」です。
透過型ミラーデバイスを利用して分割した光を目のレンズに集中させ、複数のマクスウェル視による映像投影を行うことで、映像の鮮明さをキープしたまま広い範囲で目を動かすことができます。
2.網膜走査型(レーザー走査)
網膜走査型のディスプレイは、テレビのディスプレイのように光の水平線を高速で走らせて残像効果によって映像を投影するものです。
デバイスに搭載されたミラーが反射を使ってレーザー光を水平に調節するのと同時に、ミラー自体も細かく動いて光を走査させることで網膜上に映像を描き出すことができます。
目のピント調節機能にかかわらずくっきりとした立体映像を見られるのはもちろん、映像を投影するのではなく直接書き込む方式なので広い範囲で目を動かすことも可能です。
一般向けにも約65万円と高額ですが、QDレーザから網膜走査デバイス「RETISSA(R) DisplayⅡ」がリリースされています。
ネットで話題?7Dホログラムとは?
近年、ホログラム技術に関して大きな話題になったトピックに「7Dホログラム」があります。
「7Dホログラム」とは、空間に映し出されたホログラム映像を見るだけではなく、触ったり、感じたり、匂いを嗅いだりと五感で鑑賞できるようにするものです。
数年前、ネットに公開された「7Dホログラム」を紹介する動画で、「7Dホログラムがすごい!」と世界的に大きな話題となりました。
しかし、実際には企業による「将来こんなことができるかも」という未来予想的なプロモーション動画であって、実現している技術という訳ではありませんでした。
実際に7Dホログラムを私たちが体験できるようになるまでには、まだまだ時間がかかりそうです。
それでも、7Dホログラムに関する動画が、多くの人に大きな期待を持って受け止められたことから、7Dホログラム技術の開発に弾みがついたのではないでしょうか。
まとめ
xR技術の発展・普及につれて、ますます現実とバーチャルの境が曖昧になっていく体験ができるようになりました。
そんな状況にあって、私たちの体験をより進化させてくれるのがホログラムです。
xRの活用が他分野に広がっていくにつれ、ホログラムが私たちの生活をより便利で豊かなものにしていくと見込まれています。
本来的なホログラムとホログラム的な映像表現技術の両方について、今後の展開に期待しつつ見守りたいところですね。
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筋トレとVRを愛するライター。VRでマッスルを実現できないか現在思案中。