バーチャルアイドルの歴史!伊達杏子・テライユキから初音ミク・えのぐまで!縮まるアイドルとの距離!
そこにはない架空の存在をテクノロジーの力であたかも存在するように感じられるVR。
最近普及するようになった新しい技術と思われている人も多いのではないでしょうか。
しかしVR以前にも、
”実在しない存在を現実のように感じ、楽しむ”
という試みを続けている分野があります。
それが、バーチャルアイドルです。
今回はそんなバーチャルアイドルの歴史を振り返りながら、最新のテクノロジーでバーチャルアイドルがどのように変わってきたかを紹介します。
【目 次】
バーチャルアイドルとは?
バーチャルアイドルとは、人工的に作られた実在しない架空のアイドルのことです。
当初はアニメやゲームのキャラクターなどがアイドル的な人気を獲得した場合に使われる言葉でした。
しかし、最近では文字通り「アイドル」として活動しているキャラクターが登場しています。
そして、バーチャルアイドルは3DCGやVRなどテクノロジーの進歩に合わせて進化を遂げてきました。
元祖!バーチャルアイドルのはじまりは?
バーチャルアイドルというとごく最近のものというイメージがあるかもしれませんが、実は1980年代まで歴史を遡ることができます。
実在しない架空のアイドルとして元祖と言われているのが、「超時空要塞マクロス」のリン・ミンメイです。
アニメ「超時空要塞マクロス」のヒロインとして登場するアイドル「リン・ミンメイ」の歌う楽曲が一般のアイドル歌謡として発売されたり、「リン・ミンメイ」名義のラジオ番組が放送されました。
ラジオから生まれた架空アイドル「芳賀ゆい」
架空のアイドルとして人気を博す例として欠かせないのが「芳賀ゆい」です。
ラジオ番組「伊集院光のオールナイトニッポン」内の伊集院氏の何気ない一言から派生した「芳賀ゆい」は番組リスナーの葉書によって人物像や背景が作りあげられていきました。
番組終了に合わせて「海外留学」という形で活動を終了するまで、芳賀ゆいはCD・ビデオ・写真集の発売から握手会の開催まで架空のアイドルとは思えない多彩な活動を展開していきました。
「バーチャルアイドル」という呼び名はコナミがきっかけ
そんな中で、架空のアイドルを「バーチャルアイドル」と呼ぶことになったのは、1993年にコナミによる「ウインビー国民的アイドル化計画」がきっかけと言われています。
コナミの人気ゲーム「ツインビー」に登場するウインビー機のパイロット「パステル」をメディアミックスによって国民的アイドルに育てるという企画のコンセプト説明において、「バーチャルアイドル」という言葉が初めて使われました。
プロジェクト自体は大きな成功には至らなかったものの、「バーチャルアイドル」という考え方はその後のサブカルチャーに大きな影響を与えています。
1994年にコナミが発売した美少女ゲーム「ときめきメモリアル」では、登場するキャラクターたちがバーチャルアイドルとして人気を集めました。
その中でも、メインヒロインの藤崎詩織はリリースしたシングルがオリコンチャートにランクインしたり、ファンクラブが設立されるなど、架空のアイドルが現実のアイドルに負けない人気を見せた例といえます。
VRアイドルの基礎?3DCGのバーチャルアイドルが登場!
アニメやゲームの美少女キャラクターがアイドル人気を獲得したという側面が大きい初期のバーチャルアイドルですが、3DCG技術の進歩に合わせてより人間の実体に近いバーチャルアイドルが現れるようになりました。
あのホリプロが仕掛けた!「伊達杏子」
1996年、芸能事務所ホリプロは設立35周年を記念し、株式会社ビジュアルサイエンス研究所との共同でCG技術を駆使して開発されたのが「伊達杏子」です。
タレントとして正式に事務所に所属し、芸能活動を開始したことから大きな注目を集めました。
とはいえ、当時のCG技術では本格的なアイドル活動には限界があり、活動はラジオのDJや歌手活動が中心となっています。
大きなプロジェクトとしてスタートした伊達杏子ですが、「ときメモ」の藤崎詩織のCDデビューと重なってしまい大ヒットには至りませんでした。
現在は伊達杏子の娘「伊達あやの」がVTuberとして活躍しています。
黎明期に最も活躍したバーチャルアイドル!「テライユキ」
不振に終わった伊達杏子の数年後に一般的になったインターネットの登場により3DCGのバーチャルアイドルは大きな転機を迎えます。
1998年の「テライユキ」の登場です。
「テライユキ」は、マンガ家であるくつぎけんいち氏が仕事の合間に趣味として、3DCGソフト「Shade」で作り上げたというバーチャルアイドル。
当初はくつぎ氏本人のホームページや投稿サイトを中心に発表されました。
草の根の人気を受けて商業メディアにも登場することになりヤングジャンプへのグラビア掲載を皮切りに、
- 企業キャンペーン
- テレビ番組・CMへの出演
- 写真集
- CD
- ミュージックビデオ
- ゲームソフト
などなど幅広い活躍を見せたのが特徴です。
3DCGで描かれた黎明期のバーチャルアイドルとしては、最も成功したアイドルといえます。
ネット時代!爆発的に人気を集めたバーチャルアイドル
3DCGによって普及とともに一気に広まっていった「バーチャルアイドル」ですが、インターネットの動画サイトの普及により大きな転機を迎えました。
初音ミクが登場し爆発的なヒットに。
特にインパクトが大きかったのが、2007年の「初音ミク」の登場です。
初音ミクとは、ヤマハが開発した音声合成システム「VOCALOID」楽曲に歌声を合成することができるソフトウェア音源です。
これまでのソフトウェア音源が自然な歌声の再現を最重要視していたのに対し、初音ミクではキャラクターとしての性質を与えることで声にリアリティをもたらすというコンセプトが特徴といえます。
このコンセプトこそが初音ミクが単なるソフトウェアを超えたアイドル性を獲得する要因となりました。
さらに、3DCG作成ツールの一般への普及や、YouTubeやニコニコ動画といったインターネットでの動画再生サイトの普及によって爆発的なヒットとなります。
最近でもVRやAR、ホログラム技術などを活用したライブなども行われており、初音ミクは現役の人気バーチャルアイドルとして現在も変わらぬ活動を続けています。
アイドルマスターでバーチャルアイドルにさらなる人気を呼ぶ
この時期、バーチャルアイドルに大きな影響を与えたもう一つのコンテンツが「アイドルマスター」です。
バンダイナムコのアイドル育成ゲームとして登場したアイマスは、ニコニコ動画のプレイ動画やMAD動画などの人気を追い風に成長しました。
ニコニコ動画での動画編集ツールを駆使した「P(プロデューサー)」たちの力作と、独自のアイマス文化の成長により公式イベントが派生したのも特徴です。
ゲームシリーズからアニメ、ラジオ、CDなどさまざまなメディアミックスが展開され、2018年にはコンテンツファン消費行動調査2018の『支出喚起力ランキング』にて「嵐」に次ぐ2位を記録するほどの成長を見せています。
アイマスの成功を皮切りにラブライブ!やバンドリ!など多くのアイドルゲームが登場し、いまやゲーム市場で一大ジャンルとなったアイドルコンテンツの人気の立役者と言われています。
バーチャルでも会える?!VRアイドルの登場!
3DCGやインターネットの普及により爆発的に普及したバーチャルアイドルですが、VRなどさらなる技術の進展で
- 次元の壁を超えたライブ体験
- リアルタイムなファンとのやり取り
といった新しい活動を見せるようになりました。
VRによってバーチャルでも会いに行けるアイドルへ
「VR元年」といわれた2016年を経て、バーチャルアイドルのあり方が大きく変わりました。
架空の存在を現実のように感じられるVR技術は
・バーチャルアイドルとの握手会
・アバターを通じたライブ体験
ができるようになるなどバーチャルアイドルの相性がバツグンだからです。
PSVRのローンチタイトル「サマーレッスン」に登場する「宮本ひかり」はアイドル的な展開はなかったものの初期VRを代表するヒロインとして話題となりました。
また、「アイマス」でも、ゲームの中か声優のライブとしてしか体験できなかったライブを、現実と同じように体感することができる「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」がPSVR向けにリリースされています。
VRアイドルの地位を築き上げた「えのぐ」
本格的にVR空間でのアイドル活動を前提としたバーチャルアイドルも登場するようになりました。
その代表と言えるのがVRアイドルグループ「えのぐ」です。
「えのぐ」はプロジェクトの開始以来
・アイドルデビューをかけたイベント企画
・グループ結成
・メンバーの追加・脱退
など、本物のアイドルグループさながらの壮絶な下積み活動を経て人気を獲得してきました。
VR空間やARなどの技術を駆使して生放送やライブ、握手会などのタレント活動を行っている点が「えのぐ」の特徴です。
これまでは画面の中だけの存在であったバーチャルアイドルですが、仮想空間の中で存在感を持ったアイドルとして応援することが可能となりました。
VRアイドルの存在感が高まるにつれて後発のVRアイドルも登場しています。
ジャニーズ事務所もVRアイドルをデビューさせています。
新しいバーチャルアイドルの形!VTuber!
そして現在最も新しいバーチャルアイドルの形として「VTuber」があります。
VTuberとはバーチャルYouTuberのことで、YouTubeなどの動画サイトで配信活動を行うバーチャルアイドルです。
バーチャルYouTuberとして最も有名なのが「キズナアイ」です。
2016年にYouTubeに登場したキズナアイは、Activ8株式会社により制作された美少女アニメ風のキャラクターで、ゲーム実況のような通常と変わらないYouTuber活動を行っています。
現在ではチャンネル登録者数が400万人を超えるほどの人気を獲得しており、CDリリースやCM出演、冠番組の放送、さらにはアニメ声優など通常のアイドル以上の活躍ぶりです。
また、日本国内のみならず韓国や中国、アメリカなどにもファンがおり、もはや世界で最も有名なアイドルの一人ということもできます。
キズナアイの成功を受け、
- ミライアカリ
- 電脳少女シロ
- バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん
- 輝夜月
といった後発のVTuberや自治体や企業PRのためのVTuberも登場し、バーチャルアイドルの一大ジャンルとして成長を遂げました。
こうしたVTuberの発展にはモーションキャプチャーの普及が大きく関係しています。
これまではバーチャルアイドルが生放送やリアルタイムでファンと触れ合うことはできませんでした。
しかし、スマホでもモーションキャプチャーが利用できるようになるなど身近な技術となるにつれ、バーチャルな存在でもリアルタイムでのリアクションや視聴者とのやり取りができるようになりました。
誰でも気軽にVTuber活動を開始できる環境が整ったことで、今後も数多くのVTuberが増えていくことが予想されます。
まとめ
もはや日本独自のバーチャル文化と言えるほどに定着し、成長したバーチャルアイドルの歴史を振り返ってきました。
当初はアニメやゲームのスピンオフ企画というべきものであったバーチャルアイドルも、徐々にアイドル活動を前提としたキャラクター造形やプロジェクトが当たり前になっています。
そして、ここまで見てきたようにバーチャルアイドルの歴史は技術の進歩と切ってもきれない関係です。
バーチャル技術が進むにつれてリアルアイドルと変わらない握手会やライブ体験ができるようになっています。
現実のアイドル業界では「アイドル戦国時代」と言われて久しいですが、バーチャルアイドルの世界も裾野が広いことから数多くのアイドルがしのぎを削る様相を呈してきました。
また、近年では「伊達杏子の娘」であるVTuber「伊達あやの」も登場しており、バーチャルアイドル界にも二世タレントが出現するという長い歴史ならではの出来事も起こっています。
単なるキャラクタービジネスを超えた「バーチャルアイドル」の世界が、これからどんな展開を見せていくのか楽しみですね。
筋トレとVRを愛するライター。VRでマッスルを実現できないか現在思案中。