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アメリカXR市場2017年第3四半期の投資総額は3億ドル(約330億円)。モバイルARへの投資が増加、VR全般が微減か?

調査会社Digi-Capitalは、2017年第3四半期のXR市場への投資動向に関するレポートを発表した。発表されたレポートによると、アメリカXR市場への投資は堅調に伸びている。そうしたなか、ARKit、ARCore、Camera Effectsが発表されたことによって誕生したモバイルAR市場が、投資動向にも影響を与えていることが確認された。

投資動向の概要

発表されたレポートの要点をまとめると、以下のようになる。

  • ・2017年第3四半期のアメリカXR市場への投資総額は、3億ドル(約330億円)
  • ・同四半期の投資総額は、過去18ヶ月の四半期ごとの投資額の平均とほぼ同じ(本記事トップ画像参照)
  • ・直近12ヶ月の投資総額は、18億ドル(約2,000億円)
  • モバイルAR市場への投資が活発化する一方、VR市場全般への投資がやや微減している

まず本記事トップ画像に掲載した投資総額の推移を表したグラフを見ると、計測四半期から直近12ヶ月の投資総額をプロットしている波線が右肩上がりを示していることから、アメリカXR市場の投資額が全体としては堅調に増加していることがわかる。

つぎに2017年第2四半期と2017年第3四半期を比べると、第3四半期になって投資額が減少したように見える。しかし、実際のところは2017年第2四半期がほかの四半期比べて投資額が大きかったため、減少しているように見えるだけであり、このふたつの時期を比べてXR市場の投資動向が減少に転じたと結論づけることはできない。

2017年第2四半期の投資額が多いのは、ふたつの高額投資案件があったからだ。そのひとつがゲームスタジオImprobableへの投資で、5億ドル(約560億円)の資金を調達した。同社に出資した企業には、日本企業のSoftBankも含まれている。もうひとつの案件がUnityへの投資で、4億ドル(約330億)の資金を調達した。この2社が集めた資金は、その半額が両社の従業員に分配されたので、企業に支払われてた実質的な投資額は2社の合計で4億5,000億ドルとなる。このふたつの案件だけで2017年第3四半期を上回る。

要点の最後の項目で述べたモバイルAR市場への投資が加速した原因は、ARKitとARCoreの発表によって既存のほとんどのスマホが、潜在的なARデバイスとなったことが挙げられる。モバイルAR市場のポテンシャルは、既存のVR市場に匹敵するだろう。

業種別に見た投資動向

投資動向を業種別に見た場合、以下のような傾向が認められた。

  • ・VRヘッドセット・ARデバイスを含む「Tech」市場は全体の4割を占める
  • 「ゲーム」「動画」市場は微増して、それぞれ全体の1割強を占める
  • ・「スマートグラス」「周辺機器」「ソーシャル・エンターテインメント」は昨年からほぼ横ばい
  • ・上記以外の業種では投資額の減少が認められた
  • ・投資の減少が認められた業種は「ロケーション・ベース」「教育」「サービス・ソリューション」「広告」「eコマーズ」「ビジネス」「ニュース」「医療」「企業向けサービス」「音楽」「旅行・輸送」「ユーティリティ」「スポーツ」「コンテンツ配信」「キッズ」「生産性向上」

以上の投資動向をまとめると、確実に収益を上げることが見込まれる業種に投資が集中している、と言うことができる。

長期的な予測

以上の投資動向調査結果を発表したDigi-Capitalは、先日2021年までの世界XR市場の成長予測も発表し、本メディアでもその内容を掲載した。

その成長予測をグラフ化したのが、以下の画像だ。

グラフの要点をまとめると、以下のようになる。

  • ・今後5年はモバイルAR市場が、VR・AR市場を支配する。
  • ・2018年にはモバイルARに最適化されたスマホは、9億台に達する。
  • ・ARグラスの実用化は、VR・AR市場における長期的な目標である。しかし、ARグラスがメインストリームになるには少なくとも10年後である。
  • ・モバイルAR市場の台頭により、VR市場の成長は鈍化する。
  • ・ハイエンド型VRヘッドセット市場は、次世代のスタンドアロン型に移行するまではあまり成長しない。

本記事で報じている2017年第3四半期の投資動向は、以上の長期成長予測の要点である「モバイルAR市場がXR市場を支配する」という事態が実現する兆候を示している、と解釈できる。

しかし、Digi-CapitalはARKitの発表以降一貫してモバイルAR市場の台頭を唱え続けていた「AR推し」の調査会社である。それゆえ、同社のモバイルAR市場の評価はやや過大評価の可能性が否定できない。同社のモバイルAR市場に関する成長予測をやや下方修正した数値が、もっとも妥当な予測値だと思われる。

いずれにしろ、XR市場は「VR元年」に過大評価されたほどには普及・成長していないものも、本記事で報じた投資動向調査によって、堅調に成長曲線を描いていることを実証されたと言って間違いないだろう。

ソース:Digi-Capital
https://www.digi-capital.com/news/2017/10/1-8b-arvr-investment-in-ltm-to-q3-2017/#.Web9-DBUtPb

吉本幸記


千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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