VR Inside

VR/AR/MRの未来を創るビジネスニュースメディア

ウォルマートが従業員のトレーニングにVRを活用している

ウォルマート店員がVRを利用する

VRを使ってトレーニングを行う

VRはゲームや映画といったエンターテインメントの新たな世界を生み出している技術だ。ただの流行という段階を過ぎ、最近では一年間に発売された優れたゲームに贈られるゲーム賞Golden Joystick AwardsにもBest VR Gameの部門が作られる(初の受賞作はPSVRでのプレイに対応するバイオハザード7だった)など、新たなジャンルとして存在感を示すようになっている。

しかし、VRの用途はエンターテインメントだけではない。業務の効率化を目指して企業がVRを利用する例も多く、VR空間で新製品のデザインができるアプリやVRヘッドセットを使ったネットワーク会議システムなどが開発されている。

また、ウォルマートのようにVRを使ったシミュレーションをトレーニングに取り入れている例も多い。VRを使った従業員のトレーニングは、受講者からも高い評価を得ているようだ。

ウォルマートの取り組み

ウォルマートの看板

VRに投資するウォルマート

小売店従業員のトレーニングは、顧客に満足してもらえるサービスを提供するために欠かせない。新入社員が初めて店頭に立つ前には十分なトレーニングを積む必要がある。たとえベテランであっても、基礎を確認し、より良い接客を行うためのトレーニングには意味がある。

VRを使ったリアルなシミュレーションは、本番に向けての心構えを作るために効果的だ。小売店やレストランの従業員はもちろん、手術に臨む外科医や試合前のスポーツ選手もVR空間でシミュレーションを行うようになっている。

インキュベータの設立

早い時期にこの分野への投資を発表していたのが、アメリカの大手小売チェーンウォルマートだ。ウォルマートは今年の春にVRとAIを中心とした最新技術を開発するため、独自のインキュベータ「Store№8」をスタートさせている。

ベンチャーキャピタルのように最新技術を開発する企業に投資することで直接的な利益を得ることも目的ではあるが、Amazonのようなライバルに対抗する技術を獲得することもその目的だと考えられている。インターネットを介して低コストであらゆるものを消費者に販売するAmazonはAIの開発にも積極的であり、リアル店舗を展開するウォルマートにとっては厄介な相手だ。

VRを使ったトレーニングの拡大

ウォルマートは、VRを使った従業員のトレーニングを大規模に採用している企業だ。VRの利用は昨年から始まっており、その規模を拡大する計画だとされていた。

昨年時点でVRトレーニングの対象となるのは管理者クラスの従業員のみであり、設備が導入されるのも30箇所程度と一部の研修施設に限られていた。しかし、現在ではアメリカに200箇所ある研修施設ウォルマートアカデミーの全てでVRトレーニングを利用することができるようになっているという。

各アカデミーは2ダースもの店舗の従業員をカバーするため、全てのアルバイトスタッフを含めた膨大な人数の従業員全てがVRトレーニングを受講することはできない。そのため、アカデミーの学生として学ぶのは管理者クラスとして雇われた、または昇進した従業員だ。それでも、その人数は年間で15万人とも言われている。

VRトレーニングを使う理由

店舗が従業員のトレーニングにVRを使う理由は、いくつかある。

コスト削減

その中でも特に大きいのは、低コストで同じ内容のトレーニングを繰り返し実施可能なことだろう。

通常の社員研修であれば、研修を受ける数人の社員に対して一人から数人の社員が付くことになる。企業の規模によっては、研修対象者よりも指導役の方が多いということもあるだろう。逆に学校のようなスタイルで一人が多数の生徒を相手にすることもできるが、一人が教えられる人数には限界がある。

外部の企業に研修を依頼すればその費用がかかり、ベテランの従業員を研修のために駆り出すことになればその分本来の業務が遅れることになる。研修の度にコストが発生するのだ。しかし、VRトレーニングならば一度映像を制作した後は繰り返し利用できる。

200箇所のウォルマートアカデミーで同じ内容のプログラムを実施するよりも、VRコンテンツを制作してしまった方がコストは小さい。

リアルなトレーニング

接客のトレーニングでしばしば行われるのが、同僚や上司を顧客に見立てたロールプレイだ。常日頃一緒に働いている同僚を相手に本物の顧客を相手にするような緊張感を維持することは難しいが、一対一のやり取りならばこの方法でも学ぶことができるだろう。

しかし、ロールプレイのシナリオに落とし込むのが難しいシチュエーションもある。セール商品を求める来店者が押し寄せるブラックフライデーを再現しようとすれば、大勢のエキストラが必要になってしまう。

ウォルマートのスポークスパーソンBlake Jacksonが指摘したVRトレーニングのメリットは、再現するのが難しいシチュエーションを再現できることだ。普段とは違う店舗の状態をVRで体験することで、当日に向けて準備を進められるという。

コンテンツを追加できる

VRシステムの導入にはコストがかかるが、一度設備を整えてしまえば容易にコンテンツを追加できる点もポイントだ。ウォルマートが採用しているOculus Riftのような消費者向けのVRヘッドセットを使ったシステムは、コンテンツとの結びつきが弱い。

接客ルールの変更に伴ってコンテンツをアップデートしたり、新たなトラブル事例に対応できる新コンテンツを追加したりといった作業が簡単に行えるため、長期に渡ってデバイスを利用できる。

 

接客も人間同士のコミュニケーションであり、マニュアルの理解や商品に関する知識を超えて重要になるのは心構えだ。Jacksonが言うように、「顧客が探しているものを見つける助けとなり、顧客への感謝をすることが大きな違いを生み出す」のである。

途切れることのない来店者を前に店員が慌ててしまっては、適切なサービスを提供することはできない。VRで疑似体験しておくことで、ブラックフライデーにも落ち着いて対処することができるのではないだろうか。

 

参照元サイト:News OK

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

最新ニュースを読む