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バーチャルバブルで終わらせない!VR普及のカギを握る「VR ZONE Project i Can」を仕掛けたコヤ所長・タミヤ室長の狙いとは何か?

      2016/09/01

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ネクストゲーセンとも言われているバンダイナムコエンターテインメントが手掛けるVRエンターテインメント研究施設「VR ZONE Project i Can」。

完全予約制で1セッション20名前後しか参加できないにも関わらず、すでに1200名以上の体験者が参加しており、1ヶ月先の予約も満席状態だ。

VR技術に興味がある方はもちろん、特徴的なのは家族連れやカップルなどの来場者も多く、ゲームセンターという感覚よりはテーマパークとして受け入れられているらしく、新たなエンタメの可能性を感じさせる。

そんな次世代アミューズメント施設の先駆け的存在となった「VR ZONE Project i Can」を仕掛けた株式会社バンダイナムコエンターテインメントの「コヤ所長」こと、小山 順一朗氏と「タミヤ室長」こと、田宮 幸春氏にイベント開催までの経緯や6種のアクティビティに関する開発意図などについてお話を伺ってきた。

左:コヤ所長 右:タミヤ室長

左:コヤ所長 右:タミヤ室長

 

バーチャルバブルが弾けた90年代

----まずは、本イベントの企画経緯を教えてください。

コヤ所長バンダイナムコゲームズからバンダイナムコエンターテインメントに社名を変更した背景には、今後はゲームだけでなく、新しいエンターテインメントを社員みんなで創出していきたいという想いが込めてあります。

現在、我々の軸はアーケードやコンソール・モバイルゲーム・パチンコ/パチスロなど遊技機向けのコンテンツ開発の4つの事業をメインにしていますが、その4つ以外にも新たな遊びを創出しないとエンターテインメント企業とは言えないと感じ、昨今話題のOculusを筆頭にしたVR HMDとアーケードゲーム開発のノウハウを組み合わせる事で、他の企業がやっていないVRを使った新しいエンターテインメントが作れるのではないかと思い、始めることになりました。

 

----VR HMDに初めて触れたのはいつ頃ですか?

コヤ所長91年頃ですね。私は当時、株式会社ナムコという会社に入社して、まだVRという名前がない頃から独自基板で開発をした32人乗りの「ギャラクシアン3」という遊園地のアトラクションみたいな乗り物を作りました。その後はドライブシミュレーターや教習所のシミュレーターなど作っていたのですが、その辺で「バーチャル・リアリティー」という概念が聞こえてきました。

きっかけはイギリスで超音波でHMDを認識する「バーチャリティ2000」という機材を購入した際に被ったのは初めてですね。

当時から今のVR HMDの概念が一通り、揃っていたという事実には驚く方もいると思いますが、これがまた追従性も悪く・・解像度も低く・・ポリゴンの数も300ポリゴン程度しかでなく・・フレームレートは恐らく15フレーム・・。

ガクガクガクと振り向いて1秒後についてくるようなレベルで(笑) まだまだ技術は追いついていませんでしたね。

その頃からセガさんからはバーチャファイターやバーチャレーシング、任天堂さんからはバーチャルボーイとバーチャ○○みたいなものがたくさん発売されましたが、結局「バーチャルバブル」は弾けてしまったんですよ。バーチャルってこんなものかよって。

その後、我々はVR HMDに見切りをつけVR効果が得られる別手段、ドームスクリーンを技術部の人間が1998年頃に開発をしまして、2006年に「機動戦士ガンダム 戦場の絆」を商品化しました。

今から3年ほど前「機動戦士ガンダム 戦場の絆」を作っていたチームは、技術の先進性を求めるチームで田宮と同期の方が、アメリカのショーに参加した際、Oculus代表のパルマ―・ラッキー氏から直接、DK1を貰ってきて戦場の絆を移植してみようということになりました。

ただ、実際移植してみると「戦場の絆」と一緒なんですね。

 

----一緒というのは、どういう事でしょうか?

コヤ所長ガンダムってコックピットの中のモニターで見てるじゃないですか?車の窓から見ている訳でもなく、モニターの壁面にザクとかを映しています。そうなると本来、360°の立体視がウリのVR HMDなので、特に製品版と変化がないんですね。さらに、耐久面でも不安があり、すぐの商品化は厳しいと感じていました。

それから数年が経ち、ある日SIE社のPlayStation®VRを体験する機会があったので被ってみた所、耐久面はもちろん、解像度も高いだけでなく、フレームレートも60fpsと大きなVR HMDの進化を感じました。

ただ、Oculusを始めデバイスやPCの金額も高く、普及には時間がかかる上に体験型コンテンツのため、実際に遊んでみないと面白さを理解できないものなので、いっそ弊社のグループ会社の力を結集し、自分達でお客様に体験できる場を作ろう思い、開催することにしました。

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グループシナジーが生み出した新エンタメ施設

----「体験」なしに普及がないなら、「場」を作り体感させてしまえという発想だったのですね。

タミヤ室長はい。我々、結構ラッキーだった部分もあります。

一つは特徴でもある体感マシンの開発は過去、散々作ってきていたため、リアルに感じさせるための振動椅子やスキーの動作、ドームスクリーンで映像の中に人が入っても酔わずに楽しめるノウハウなどが蓄積されていた点です。

また、一方直接お客様にモノを提供して対価をいただくというような商売の口も既にありました。

家庭用に普及するには時間が掛かることも容易に想像できましたので、自分達で一番最高のVR体験を手軽にできる場所を作れるのではないかと考えた時、必要なピースがうまく組み合わさったという感じでしたね。

 

コヤ所長VRは酔いとの闘いな面もあり、粗製濫造されたものが提供されて過去のVRバブル同様、弾けさせたくないという想いもありました。また、40歳ぐらいの方にインタビューすると「VRでしょ?知ってるよ、量販店のエレベーターの横にあるやつね。体験済みだよ」とかなり誤解されている方も多くて(笑)

VRに携わるものとしては誤解の解消もしていく必要があるとも感じています。

 

----ありがとうございます。続いて、イベント開催までどの程度の期間がかかりましたか?

タミヤ室長昨年の8月あたりから一斉に各コンテンツの制作を開始して4月15日にOPENだったので、約半年ですね。そうとう期間は短いと思います(笑)

リアルドライブだけは先行して動いていましたが、それ以外のコンテンツはフルスクラッチです。
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コヤ所長よくできましたよね(笑)

タミヤ室長ミラクルですね。

 

コヤ所長12月ぐらいの時はスキーもホラーも終わりかな、ちょっと無理かなって。

タミヤ室長年末はどれもやばかったですよね(笑)

 

----ハード・ソフトの開発から会場準備、プロモーションなど全部を半年で仕込むってなると相当大変ですよね。

タミヤ室長正直厳しかったですね。

試行錯誤がほぼできない進行だったので、最初にコンセプトとコンテンツの方向だけしっかり決めました。ハード面はほぼ手戻りがないのは想像ついたので、いかにソフト、体験の所を一直線で進めるか、その為にPCもグラフィックボードを最高水準にして変な調整が入らないようになど工夫したのですが、スキーとホラーはかなり難産でした・・・。

 

コヤ所長:田宮がコンテンツの制作指揮を一人で取ってくれていたので、大分辛そうでしたね。9月頃にアーガイルシフトのロボットデザインを変更したいと相談したら、いつも断ったりしないのに「無理です!」って(笑)

 

タミヤ室長アーガイルシフトに関してはほぼ自分より上の人達に誰も見せない状態で進行して、出来上がりだけ見せました。みんなアーガイルシフトだけ謎のプロジェクトで不安だ不安だって言ってました(笑)

 

コヤ所長ムービーを少し見せてもらったぐらいでほとんど全容を把握してなかったですね。

 

ゲームっぽさを排除し、リアリティー重視に

----スキーロデオはどういう点が苦労されましたか?

タミヤ室長スキーは体感筐体ができるまでお店に出せるか半信半疑でした。筐体が来るまでは座った状態且つ全く揺れない場所でしかも、コントローラーを使って検証しないといけなかったのですが。VR HMDを被ると100%酔うんですね。

こんなものをお店に出して大丈夫なのかという話をしながら、体感筐体を待ちつつ、その間に潰せる酔いの原因を潰していきながらコースも何度も変更してました。開発のメンバーが地道にディスカッションしながら直した結果、いいモノになりましたね。

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 

コヤ所長筐体面では9・10月は雪なんて降ってないので、溝の口の人工スキー場に何度も足を運んで、スノーボードをやる施設にスキーを履いた男たちが短い斜面を滑りながら、よりリアルな雪の感覚を探りながら作っていました。

 

----脱出病棟Ωはどのような点に苦労しましたか?

タミヤ室長ホラーはルートの組み方や仕掛けを一つの体験にするのに時間がかかって、組み上がったのが12月でした。ただ、この段階で体験したら全然怖くなかったんですよね。

 

コヤ所長原因はいろいろあります。例えば作り手は作っているうちに恐怖演出が足りないと感じ、30秒に1回脅かすようにするのですが、頻繁に脅かされても慣れてくるので怖くなくなるんですよね。あと、作り込んだ絵も見せたくなるので、通路を明るくしてしまい、結果怖くなくなる。

 

タミヤ室長実はテストで用意していた仕掛けのない、ただの通路を通る方がよっぽど怖かったんですよね。単純にいつ来るかわからない恐怖が。年末にこれはまずいと感じ、正月の宿題としてそれぞれお化け屋敷の研究をしました。

嫌いなんですけどね、ホラーとか(笑)。 年明けに研究成果を持ち寄り、方向性を改めてチームメンバーと握り直し、短期間でゴロッと中身を変えました。

©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 

コヤ所長元々、「タイムクライシス」というガンシューティングを作っているチームがメインで作っていたので、ルートによって仕掛けを変化させるのが得意なチームなんですね。ただ、作っているといろいろな要素を詰め込もう!と考えて、いい塩梅がわからなくなってしまう。そこを間引いて大きく変えました。

 

タミヤ室長特に大きい変更点としては「殺さない」方向に舵を切り直しました。途中で気づいたんですよ、「殺しちゃいけない」という事に。

初期のバージョンだと殺しにかかる仕掛けがあって、切られた際に体力が減るようなパターンでした。何度かダメージを受けるとゲームオーバーという流れだったのですが、VRでこのパターンをやってしまうと体力ゲージが減った瞬間、我に返っちゃうんですよね。あれ、死なないんだと。VRだと実際に体に起こらない事を表現すると冷めてしまうのだと思います。

バイオハザードのようなゲームだとダメージ表現をしても怖いと思うのに、VRだと恐怖を感じなくなってしまうという三人称と一人称での感じ方の違いに気づくことができたのは大きな収穫でした。

だからこそ、死ぬ瞬間が一番怖いと定義し直して、死んだら1発ゲームオーバーに変更しました。

 

コヤ所長要するにゲーム的な作り方をやめることにしました。いわゆる体力メーターとかタイマーも全てなくし、本当の廃病棟で閉じ込めらている設定なのだから、親切設計は全部取り除きましたね。唯一のゲームっぽさは進行方向を示す矢印ぐらいかな。

 

本能⇔理屈をバランス良く配置

----短いスパンの中で試行錯誤を繰り返して作り上げたのですね。そもそも6つのアクティビティはどのような経緯で開発することになったのでしょうか?

コヤ所長わかりやすく言うと「本能」で体験するアクティビティと「理屈」で楽しむアクティビティをバランス良く作りました。本能100%のアクティビティは高所恐怖症体験で次にホラー、アーガイルシフトが真ん中の本能理屈型でスキーや電車は理屈を理解しながら体験するアクティビティになっています。

 

タミヤ室長VRは体感型コンテンツなので、初見の方がまず「高所恐怖SHOW」を体験し、VRに魅力を感じてもらってから、段々とやり込み要素のあるリアルドライブやトレインマイスターでVRコンテンツにハマってもらう、というような流れをイメージして店舗の配置も決めています。

 

----計算された配置になっているのですね。OPENしてから集客面ではいかがでしょうか?

タミヤ室長ありがたいことに、現在一ヶ月先の予約まで埋まっています。1回約20人強の体験者をご案内している状態で、ほぼフルで回ってはいますが、外から店の中を見ると余裕があるように見えますよね。

その理由はせっかく、予約して遊びに来ていただいた方なので体験したかったアクティビティはしっかり遊んでもらおうという趣旨が1つ。もう一つは初の試みのため、運営面で何が起こるかわからず、トラブルが発生する可能性もあるのでわざと人数に制限をかけています。安全面への配慮とお客様が不便さを感じず、楽しかった!と思ってもらって帰れるように運営スタッフにはとにかく丁寧に対応するよう言い聞かせています。

 

----何名ぐらいの運営スタッフが常駐しているのですか?

タミヤ室長各アクティビティに一人いるので、店長を含めると8名程度ですね。

 

コヤ所長お客様も2~3回程度VR HMDを装着すれば慣れてくるので、もう少しオペレーションの改善はできると思います。そういう部分を含め、今は改善点を洗い出しているフェーズです。

 

----一人当たりの平均プレイ数をお教えください。

タミヤ室長1枠2時間なので、4コンテンツ前後ですね。土日と平日だと客層が違っていて、土日は家族やカップルが多いですね。

平日はまだ業界関係者の方が多いですが。

 

----私の友人も「高所恐怖SHOW」を体験してVRすごい!とSNSで写真を上げてました!

コヤ所長タミヤ室長嬉しいですね!

 

タミヤ室長「高所恐怖SHOW」、実は始め板を見せずに1枚カーテンを挟む設計だったんですね。要するにVR HMD装着時に板を見せず、カーテンの中に入ることで本当に高層ビルの上にいるような錯覚を演出したいと思ったからです。

ただ、社内の人間含めみんなで体験している時に、自分の知っている人が狼狽えている姿をみんなで見て笑うのが面白いと感じ、最後の最後で設計を変更しました。カーテンは外してグループはひとまとまりで部屋に入れるよう変更、ガンガン写真を取れるような環境にした所、これを皆さんが面白がってくれてSNS投稿が増え、口コミでVR ZONEが話題になりました。

いわゆる芸人さんのリアクションを、自分の友人がやっているシーンを見るのが面白いという点はかなりの気づきでしたね。

 

仲間はずれが生まれない

----全員で盛り上がれるというのもVR ZONEの魅力なんですね。

タミヤ室長はい。遊園地の絶叫体験モノは大仕掛けなので、そういう友達の狼狽えている姿って見れないですし、お化け屋敷などのホラーも好きな人は好きだけど、嫌いな人が体験しないというパターンが多いと思いますがVR ZONEだと体験者以外も狼狽えている友人を撮影して楽しめるし、仲間はずれ感がないんですよね。

友達が楽しんでいるのを面白がる、というグループの中でエンターテインメントが成立し始めている気がして、単純にハイテクの展示場ではない、アナログな面白さ・楽しさっていうのは出始めているのも面白いなと感じています。

 

コヤ所長完全予約制にしたのも効果があると思っていて、みんなが会場の中だけはVR用マスクをつけて、ウロウロするんですよね。他の空間だと変態だと思われるのに、VR ZONEの中だと同じ施設で楽しんでいるんだって仲間意識ができるから、なぜか変に思わないし、逆に面白がってマスクしてる顏を写真で撮ってSNSにアップされるんですよ。

素顔が出ている訳じゃないし、写真ネタとしても面白いから。

 

タミヤ室長あのマスクは最後まで悩んだんですよね。絶対、変だって(笑)。 ただ、衛生面で手段がなくやったのですが、結果入口からマスクをして記念写真を撮る方が出てきて、今やあのマスクがVR ZONEの象徴的なシンボルになりつつあります。

 

----これだけ聞くと行きたい方が増えると思いますが、予約状況は満席状態・・。いつ頃だったら空き枠が出そうでしょうか?

タミヤ室長毎日、12時更新で1ヶ月先の1日が予約できるシステムなので、毎日こまめに確認してもらうのがいいと思います。一時期、メディアに出始めた時は12時を2分過ぎただけで完売になった時もありましたが、今は少し落ち着いているので、ぜひ予約してみてください。

 

コヤ所長あと、実は平日にポロポロキャンセルが発生しているので、直近の日程を確認するのもオススメです。

 

----最後に近々、アクティビティの差し替えなどは予定されていますか?

コヤ所長はい。すでに出来上がっているので、作り手としては早く出してほしい気持ちがあるのですが、まだ現在のアクティビティでさえ1200人ぐらいしか体験していないので、差し替えていいんだろうか・・という悩みがあるんですよね。

 

タミヤ室長現在は投入タイミングを見計らっているという状況です。

 

コヤ所長ただ、かなり斜め上のアクティビティになっているので楽しみにしていて欲しいです。

 

グループ会社とのシナジー、蓄積されたノウハウ、そしてエンターテインメント企業としての想いが相まって超短期間での実施にも関わらず、クオリティーが担保されたアクティビティー作れたのだと感じた。

今までのゲームセンターやアミューズメント施設とは一味も二味も違うエンターテインメント施設「VR ZONE Project i Can」。

エンタメの在り方がVRの登場で大きく変化している昨今、楽しみ方も大きく変わっていることがよくわかる事例だと思う。

今後も新たな筐体を準備しているみたいなので、行った事がない方はもちろん、一度行った方でも楽しめると思うので、ぜひ参加してみよう。

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©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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Ryohei Watanabe

Writer: 2012年よりスマホゲーム専門メディア「アプリ★ゲット」で記事執筆・編集・メディア運用・アライアンスなどを担当。

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