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統合ハプティックシステム開発のAxonVRが2.2億円の追加資金を獲得 - VR Inside

統合ハプティックシステム開発のAxonVRが2.2億円の追加資金を獲得

     

感覚を再現する装置

装置が重さや手に触れる感覚を作り出す

VRヘッドセットはVR空間にいるキャラクターの視点から見た映像や音声をユーザにもたらしてくれる。ハンドトラッキングコントローラーを使えば、手の動きをVR空間に反映させることもできる。

だが、一般家庭向けに販売されているVRデバイスではVRオブジェクトを持ち上げた時の重さや温度を感じることはできない。そうした触覚フィードバックをもたらそうとしている企業の一つがAxonVRだ。

AxonVRは6月14日のブログ記事で、ハプティクス技術の基礎となる特許を取得したことを発表した。また、Geek WireによればAxonVRが新たに200万ドル(2.2億円)の資金を調達することに成功したという。

同社のプラットフォームには、ゲームやVRトレーニングを進化させるポテンシャルがある。

AxonVRの新しい特許

AxonVRの特許から

活き活きとした触覚フィードバックのための特許を取得した

初めての特許

AxonVRは6月14日のブログ記事で新たな特許を取得したことを伝えた。同社によれば、この特許(米国特許番号9,652,037)はウェアラブルデバイスにおける触覚フィードバックの基礎をなす技術を保護するものだという。

「バーチャル・リアリティのリアリティある触覚を実現する」ための特許とされているこの技術は130ページに渡り、AxonVRがハプティックシステム全体を実現するために出願している多くの技術の一部だ。AxonVRが特許の取得を目指す技術の中で初めての特許である。

保護の対象

AxonVRのCEO、Jake Rubinは

「この特許は、ハプティックテクノロジーの最先端で長年研究を続けてきた成果です。

AxonVRの研究するHaptXプラットフォームの中心となるマイクロ流体技術を包括的に保護するための特許です」

とブログで声明を発表している。

この特許の発明者には、Rubinの他にRobert Crockettがいる。CrockettはAxonVRの共同設立者であり、同社のリードエンジニアだ。

彼は、HaptXプラットフォームが使用するマイクロ流体アーキテクチャがリアルな触覚フィードバックに欠かせないという。

「この特許に示されている新技術のマイクロ流体アーキテクチャは、ウェアラブルな触覚デバイスにこれまでに無い優れた性質を提供します。

この技術を使うことでデバイスは小さく、繊細で、効果的になります。

他の触覚技術では、リアルな触覚フィードバックをもたらすために必要となるこうした性質の組み合わせを実現することができません」

AxonVRとHaptX

AxonVRの図

全身でVRを感じられるHaptXプラットフォーム

資金の獲得

ハプティックフィードバックの存在は、VR体験をより現実感のあるものにしてくれる。映像と音声だけでなくVRオブジェクトに触れた感覚まで再現されるようになれば、体験はさらに深くなる。

AxonVRが目指すのは、「VRとリアルが区別できない世界」だ。

この企業が持つマイクロ流体アーキテクチャには、投資家からの期待も大きい。AxonVRは、以前も同社に投資している投資家から新たに200万ドルの資金を獲得している。

AxopnVRは昨年の12月にも580万ドルの資金を得ているため、同社の持つ資金は合計で900万ドル(10億円)になっている。全身へのフィードバックを提供する大掛かりなデバイスを開発することを考えても、十分な資金が集まった。

HaptXプラットフォームと他のフィードバックシステム

AxonXが開発を進めるプラットフォームの特徴となるのは、そのフィードバックが非常に幅広く、包括的なものであることだ。

ハプティックデバイスを開発するスタートアップ企業の多くは手で物に触れたり、掴んだりする感覚を再現しようとしている。この方針自体は正しい。

手や指は人間の身体の中でも特に繊細な部分であり、手を使ってVRオブジェクトを操作することが多い。そのため、手で触れる感覚だけでも再現できれば体験は深いものになるはずだ。

HaptXプラットフォームは手だけではなく全身を対象としている。装置が大きなものになり価格も高くなってしまうという欠点はあるが、VR体験のリアルさと深さは他の追随を許さないものになるだろう。

家庭向けではなく商業施設向けの装置として考えれば、大きさや価格を体験の質でカバーできる。

HaptXシステムの中身

HaptXシステムには、様々な要素が含まれている。

HaptXシステムの中心となるのが軽量外骨格のHaptX Skeletonだ。ユーザの全身を覆うこのフレームは、ユーザの身体を押すことで物理的な刺激を加え、逆にユーザの動きを認識してVRへの入力として使用する。

HaptX Skeleton以上に細かな動きを担当するのがHaptX Skinと呼ばれる素材だ。この2つが組み合わさってユーザをVRに没入させる。

さらに、HaptX SDKも提供される。このSDKを使えば、デベロッパーがアプリケーションをHaptXプラットフォームに対応させることが容易になる。HaptXプラットフォームを使って遊べるコンテンツが多数作られるはずだ。

HaptXの利用イメージ

VR空間を駆けるプレイヤー

VR空間を駆けるプレイヤー

HaptXは大いに期待されるプラットフォームだ。E3 2017で発表され、デモが公開されたVRゲームにもHaptXを利用することでより楽しいVR体験に進化しそうなものがある。

AxonVRのブログでは、シニアコミュニケーションマネージャーのGreg Bilslandが「触覚フィードバックが大きな役割を持つ5つのゲーム」を挙げている。

ゲームにおけるフィードバックは、いまだに1990年代に発売されたニンテンドー64の振動パックからさほど進化していない。しかし、HaptXのようなプラットフォームが実現すればゲームはますます魅力的なコンテンツになるだろうという。

アサシンクリード オリジンズ(Assassins's Creed Origins)

『アサシンクリード』シリーズは三人称視点のゲームであり、その点でVRには適していない。だが、このゲームでプレイヤーキャラクターのアサシンは自由に走り回り、上り、跳ぶことが可能だ。

ピラミッドの側面に手を触れた感覚や、人目を盗んで武器を構えているときの感覚が再現されればとても臨場感のあるゲームになる、という理由から一番目に選出されている。

スカイリム(Skyrim)

言わずと知れたオープンワールドRPGの傑作がPSVRで発売される。予定通りに進めば、2017年の11月に登場するはずだ。

ベセスダはFallout 4やDoomもVRバージョンを開発していると発表しているので、さほど驚きはない。主人公や仲間となるキャラクターが重視される多くのRPGと異なり、スカイリムは一人称視点でのプレイも可能なのでVRに適している。

一人称視点でスカイリムをプレイすると、目に入るのはプレイヤーキャラクターの腕と手に持っている武器や盾だ。ハンドトラッキングコントローラーで剣を振るときに重量感があれば、画面内の腕が自分の腕のように感じられるだろう。

HaptXプラットフォームは暑さ・寒さも再現できるので、火や氷の魔法を使って戦う魔法使いの気分にもなれる。

フォルツァ モータースポーツ7(Forza Motorsport 7)

VRとハプティックフィードバックが適しているのは、自分の足で走り回って敵と戦うゲームばかりではない。マイクロソフトの長寿シリーズであるフォルツァの最新作は、Xbox One Xを使えば60fpsの4K映像で楽しめる。

このゲームがVRに対応してハプティックフィードバックが得られるようになれば、加速・減速時の慣性、コーナリング時の遠心力、エンジンの振動といったものを感じられるようになるだろう。

巨大なレーシングシミュレータを使わなくても、HaptXプラットフォームがあれば本物のレーサーになった気分が味わえるようになる。

ワンダと巨像(Shadow of the Colossus)

ワンダと巨像は2005年にPS2タイトルとして登場した古い作品だが、今年のE3でPS4版が発表された。高解像度でリマスタリングされた作品は、再びファンを楽しませてくれるだろう。

ハプティックフィードバックがあれば、巨像の身体によじ登るシーンでその身体を構成する岩の質感を感じられるはずだ。全身にフィードバックを与えられるHaptXなら、巨像が地面を踏みしめる振動もプレイヤーの足元に伝えられる。

Doom VFR

最後のタイトルはDoom VFRだ。2017年中にHTC VivePSVRに対応して発売される予定となっている。

巨大な武器で敵を次々と肉片に変えていくこのゲームは、必ずしも全てのゲーマーにおすすめできるタイトルではない。しかし、好きなプレイヤーは大好きなタイトルだろう。

これまでのFPSではコントローラーを使ってプレイヤーキャラクターを操作してきたが、それはBilslandに言わせれば「野球のバットでテニスをするようなもの」だ。不可能ではないにしても、テニスラケットを使った方が快適なはずだ。

発砲の衝撃や熱くなる銃身、チェーンソーを始動させたときのエンジンの振動を感じることができるハプティックフィードバックによって、激しいゲームはよりエキサイティングなものになるに違いない。

 

AxonVRのシステムは、一般にイメージされるVRゲーム以外にも多くのゲームを進化させる可能性がある。特に商業施設では、ハプティックデバイスの導入によって家庭用VRデバイスの体験と差別化することができるだろう。

もちろん、エンターテイメント用途だけでなく製造業の現場やVRシミュレータを使ったトレーニングへの利用も考えられている。

HaptXプラットフォームはユーザの全身を使った動きを認識できるため、多くの業種でトレーニングに利用できるだろう。スポーツ選手の練習や軍隊での訓練など、身体の動きが多い分野でも使えるかもしれない。

HaptXはまだプロトタイプの段階にあり、発売時期や価格の情報はない。だが、これからが楽しみなプラットフォームだ。

 

参照元サイト名:AxonVR
URL:http://axonvr.com/blog/press-release-seed-announcement-4dxg4
URL:http://axonvr.com/blog/five-games-from-e3-that-need-killer-haptics

参照元サイト名:Geek Wire
URL:https://www.geekwire.com/2017/axonvr-raises-another-2m-lands-patent-haptic-tech-simulates-life-like-touch-vr/

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。