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VR連動で筋肉に電気を流すシステムは触覚を再現する最終手段? - VR Inside

VR連動で筋肉に電気を流すシステムは触覚を再現する最終手段?

     

筋肉に電気を流す

VRに連動して筋肉に電流を通すと聞くと、バラエティ番組の罰ゲームかマッドサイエンティストの研究のように思われるかもしれない。上の画像も一見するとふざけているように見えるが、これは真面目に研究されているシンプルなウェアラブルデバイスの話だ。

電気を流すといっても強い痛みを与えるわけではなく、VR空間での動作に対するフィードバックとして筋肉を刺激するのが目的である。この方法ならば、大掛かりなボディスーツや手袋のようなデバイスを使う必要はない。

おまけに、上記のようなデバイスでボールやドアノブは再現できるが、壁や扉といった存在をリアルに再現するのは難しい。そこで電気刺激によって感覚を再現する方法が登場する。

電気刺激でバーチャルな感覚を作る

人間とコンピュータのインタラクションを研究するPedro Lopesは、VRユーザに「壁」を感じさせる方法として電気刺激を用いることを思いついた。

Lopesはドイツのポツダムにある研究施設Hasso Plattner InstituteのPatrick Baudisch、Sijing You、Lung-Pan Cheng、Sebastian Marweckiと協力してユーザの筋肉に電気刺激を与えるウェアラブルデバイスを作り出した。

このシステムでは、ユーザの動作に合わせて装置が筋肉を刺激する。ちょうど低周波治療器のようなパッドが腕に取り付けられており、対応する部位の筋肉を刺激することで抵抗感を生み出すのだ。

オブジェクトを持ち上げる

四角いものがある!

VR空間で両手を伸ばして箱のようなオブジェクトを持つと、ユーザの腕を外へ開かせる方向に力がかかる。実際には電気刺激によってユーザ自身の筋肉が緊張することで腕を開くように動くのだが、ユーザには「箱を持っているから抵抗がある」と感じられるという。

さらに、オブジェクトの重さに合わせて下方向への力も働く。これもユーザの筋肉が作り出した力だが、「箱が重い」と感じられるはずだ。

複数の筋肉を刺激する

異なる方向に力が働く

それぞれ手首、上腕二頭筋、三頭筋、肩を刺激したときの反応

このシステムでは4種類の筋肉(両側なので最大8箇所)を同時に刺激することで、VR空間の状況に合わせた複数の力を再現することが可能になっている。手首や肘を曲げさせる、肘を伸ばさせる、腕を開かせるという動きの強弱と組み合わせにより、物体の抵抗や重力を再現可能だ。

このシステムはバックパックに筋肉を刺激する医療用の装置を内蔵し、ヘッドセットはサムスンのGear VRを使用している。このまま製品化を目指しているプロダクトではないが、モバイルVRでも実現可能ならば拡張性は高いはずだ。

壁の再現に挑戦

後ろに引っ張られる感覚

これまでに考えられてきた手袋型の、あるいは全身を覆うボディスーツ型のハプティックシステムでは再現が難しいとされてきたのが、壁の感触だ。

VR空間で壁に触れたときに振動によってそのことを伝える、その先へ腕を伸ばせないようにスーツを収縮させるといった方法はあるが、いずれも壁に触れた感触とは異なる。あくまでも「そこにVR空間では壁があることを伝える」だけに留まっている。

だが、筋肉への電気刺激はこれまでにないリアルな壁の感覚を作り出すという。

シンプルで頑丈な壁のイメージ

最初にLopesが考えたのが、VR空間の壁をユーザの手が突き抜けるのを防ぐ方法だ。ユーザが壁に触れている間は電気を流し続け、手が壁を貫通してしまわないようにする。ユーザが強く壁を押せば、電気刺激も強くなる仕組みだ。

この方法だと、外見上は上手く壁が機能する。しかし、テストに参加したユーザは壁を押しているというよりも「腕を後ろに引っ張られているような感じ」だったという。

筋肉を収縮させるための強い刺激が継続することで、そちらにユーザの注意が向いてしまうようだ。

二つの代替案のイメージ

二つの代替案イメージ

そこで、Lopesは二つの代替案を考案した。

一つはソフトに反発する壁のイメージ、もう一つは強く反発する壁のイメージだ。

ソフトな壁を作るアイデア(画像左のイメージ)では、電気刺激を弱めることにした。刺激を弱くしたことでユーザの手が10cmほど壁にめり込んでしまうが、引っ張られるのではなく押し返される感覚を作ることに成功した。

この方法は、VRでの一般的な壁を表現するために利用できそうだ。強い刺激と違って筋肉に意識が向きにくいため、さりげなく進入禁止エリアを示すこともできるだろう。

もう一つの強く反発させる方法(画像右)では電気刺激を強くした。その代わりに、持続時間は200から300ミリ秒程度まで短くした。ユーザごとに調整した強めの刺激を加えることで、オブジェクトから素早く手を離させることができる。

こちらはただの壁というよりも、触れてはいけない場所にふさわしい。VRゲームでのダメージがあるオブジェクトを表現するのに適しているだろう。映像にある電流の走る鉄柵などには最適だ。

 

このハードウェアの優れた点は、外骨格スーツのように巨大デバイスを必要とせずコンパクトなところだ。身体の各部にパッドを装着する必要はあるが、現在の8箇所よりも多くの筋肉に対応させることも可能だろう。

また、他のハプティックシステムのように身体を覆わないことも利点となり得る。

VRgluvやMaestro gloveのような手袋型のデバイスはVRオブジェクトを掴む感覚を再現する代わりに、「リアルで」ものを掴むには不便になってしまう。銃やバットのような形のVRコントローラーとの併用は難しく、現実で壁に手が当たっても分かりにくい。

自由に手を動かせるこのシステムならば、そういった心配はない。製品化にはデザインを練り直すべきだが、ハプティックシステムとしてのポテンシャルは高そうだ。

 

参照元サイト名:Pedro Lopes Research
URL:http://plopes.org/project/haptics-vr-walls-objects-using-ems/

参照元サイト名:CO.DESIGN
URL:https://www.fastcodesign.com/90109556/the-final-frontier-in-virtual-reality-hacking-your-muscles

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。