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建築前に新居の中を歩けるVeriConのHoloLensアプリ - VR Inside

建築前に新居の中を歩けるVeriConのHoloLensアプリ

     

HoloLensで未来の家を見る

VeriConのHoloLensアプリで家の完成図を見る

多くの人にとって、住宅は人生で最も大きな買い物の一つだ。だが、新しく建ててもらう場合には実物を見ることなくその設計を決めなくてはならない。

完成後に家がどのようになるのかイメージするための方法としては、設計図から自分で想像するか、それが可能な人に頼んで設計図を元に完成予想図を描いてもらうかだ。最近では3DレンダリングされたCGをディスプレイで確認することもできるようになっているが、それでも実際に建物を見るのとは印象が違うだろう。

そのギャップをなくせるかもしれないHoloLens用アプリがオランダの構造エンジニアリング企業VeriConから登場した。

HoloLensで住宅を見る

VR内覧の流行

建売住宅や中古住宅の場合、賃貸住宅を探している場合など、建物が存在しているならば直接現地を見に行くのが一番確実で間違いのない方法だ。実際にその場に行けば、物件そのものだけでなく周辺の駅や生活に利用する店舗の様子、近隣住民の雰囲気なども感じることができる。

だが、いつでもそれができるとは限らない。特に急に転勤が決まったケースなどは引っ越す先までの距離が遠かったり、業務の引き継ぎに忙しかったりといった理由で内覧に行く時間がないこともあるだろう。

そういったときに味方になってくれるのがVRを使った内覧サービスだ。最近ではこのサービスを提供する不動産仲介業者も増えてきた。

写真は、その日の天気や切り取るアングル次第で同じ場所でも写りが変わってしまう。不動産情報サイトで公開されている間取り図や数枚の写真で家を決めてしまうのは不安だが、VRで自由に見て回れるならば現物との差は少ないことが期待できる。

VR体験だけで契約まで決断しないにしても、候補を絞り込むことはできるはずだ。

まだできていない建物を見る

VeriConが開発したHoloLensアプリでは、マイクロソフトのMRヘッドセットHoloLensを使って設計図段階の住居を見ることができる。

HoloLensを付けて空き地を歩けば、家の外観がどのように見えるのかを確認可能だ。もちろん、建物の中に入ることもできる。図面を読むことができない普通の人でも、自分の足で歩くことで部屋がどれくらいの広さになるのかを身体で感じることができるだろう。

動画では、建物の枠組みだけでなくキッチンカウンターやテーブルもMRオブジェクトとして作られている。HoloLensで見ると本当にそこに家具があると感じられるという。

VeriConのシニアコンサルタントSander EkstijnがNext Realityに語ったことによると、動画でMRを体験した女性は「ベッドの中」を歩くのを不安に感じ、ぶつからないようにベッドを避けて歩いたという。

MRで表示された壁を指差しながらチームのメンバーに話しかけるということもあったようだ。メンバーにはMRオブジェクトが見えていないため、Surfaceの画面を見なければならなかった。

MRは現実に存在する感覚が強く、他の人には見えないということを忘れてしまうらしい。

このアプリケーションにはフロアを移動するための特別な音声コマンドが用意されており、2階建てやそれ以上の建物にも対応できる。

また、建物の側を移動させることも可能だという。動画ではユーザが自分の足で歩いているが、MRで家を配置できるようなスペースがない場合には建物の方を移動させながら見て回ることになるだろう。

建築のためのMR

住宅の購入を考える消費者にとって、その完成図をMRで見られるこのアプリケーションはとても便利な存在だ。だが、VeriConは消費者のためだけにMRを利用しようと考えているわけではない。VeriConが公開している他の映像は消費者向けではないが、デベロッパーにとっては興味深いものではないだろうか。

建築に携わる作業者や設計者にとっても、このアプリケーションは作業の効率を高めてくれる存在だ。2Dデータを使う場合よりも作業スピードが早くなるという。もちろん、ヘッドセットを使ってPDFデータを表示することも可能だ。

MRに組み込む建造物のデータには基礎部分、配管、表面の加工まで多くのデータを組み込むことができる。平面図よりもはるかに多くの情報をまとめて管理できるのが長所だ。

情報が多すぎると読み取るのが難しくなってしまいがちだが、MRならば作業者や作業の段階に合わせて不要なレイヤーを非表示にし、必要な情報だけを見ることもできる。配管工事を行っている段階では、内装の仕上げを気にする必要はない。

下の映像の最後では、チームの全員が見られるように建物の全体像を縮小して表示させている。ここではタブレット端末を覗き込んでいるが、HoloLensが多数あればさらに便利になるだろう。

MRアプリ開発の裏側

Ekstijnはまた、このアプリケーションを開発した裏側についても質問に答えている。

開発環境

このアプリケーションは、ネットワーク上に構築されたWindows 10の仮想マシンで開発されたという。

アプリケーションのエンジンにはVRアプリケーションの開発用としても大きなシェアを持つUnityが利用されており、マイクロソフトの開発環境であるVisual Studioも使用している。

開発の進行

プロジェクトの開始から1週間でできたのは、デザインのデータを保持できるだけの非常にシンプルなアプリだったという。その後、MRオブジェクトを操作する機能が追加されていった。

当初は空中に表示されたボタンを使ってメニューを操作していたが、UIは開発が進むに従って洗練されていった。1/1スケールのモデルはオフィスの中に表示するには大きすぎ、ボタンや音声コマンドでの操作に対応する必要があることも判明した。

試行錯誤の結果とユーザに開発中のアプリを試してもらってのフィードバックを参考に、アプリの開発は進んでいった。ユーザが今アプリ内で行える操作を把握できるようにする(かつ、メニューが建造物を隠さないようにする)ことが重要だという。

リリース版では、開発中のバージョンよりもフレームレートを安定させ、読み込みを高速化することに成功している。

困難だったこと

マイクロソフトのHoloLensはまだ消費者向けの製品としてリリースされていない。開発者向けのキットの中で比べても、比較的高価なデバイスだ。そうした事情もあり、MRコンテンツの開発に関するドキュメントは少ない。

Ekstijnもドキュメントの少なさに苦労したという。また、マイクロソフトが用意したエラーメッセージの分かりにくさも問題だ。

ソフトウェアや環境の設定に誤りがあればエラーメッセージが表示されるが、その内容は「何が間違っていて」「どうすれば解決できるのか」が明確でないこともあったという。データを保存するストレージへのアクセス権限でトラブルが起きることもあったようだ。

他に、ハードウェア的な制限もある。

HoloLensのメモリ容量は2GBと小さく、SSDの容量も小さい。そのため、ファイルサイズが大きくなりやすい建造物のデータでは工夫が必要だったようだ。建物の何階の、どういった情報のレイヤーが必要なのかを判断してスマートに読み込むようにしなければならなかったという。

狭いと指摘されることがあるHoloLensの視野角について、Ekstijn自身はメガネをかけていることもあって気にならなかったとしつつも、「もう少し大きいと良いですね」とコメントしている。

 

UnityとOculus Riftを使ったVRゲームの開発であれば、情報も増えてきている。しかし、HoloLensでの開発についてはまだまだドキュメントが少ない状態だ。新しい技術に挑戦するときに一番困るのは、先人が少ないことである。

不動産業界でのVR利用はかなり増えてきているので、MRも今回のアプリをきっかけに利用が拡大するかもしれない。前例に囚われてしまうこともあるが、何もない状態と比べて開発を進めやすくなるのも事実だ。

 

参照元サイト名:Next Reality
URL:https://hololens.reality.news/news/future-homeowners-can-walk-through-house-before-its-built-with-vericons-hololens-app-0176043/

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。