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バーチャルな幽体離脱体験をすると「死に対する恐怖」が少なくなる、という研究結果が発表される - VR Inside

バーチャルな幽体離脱体験をすると「死に対する恐怖」が少なくなる、という研究結果が発表される

     

海外メディアVRScoutは、バーチャルな幽体離脱体験に関する研究結果を紹介した。

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VRが可能としたバーチャルな「幽体離脱」実験

同メディアが紹介した論文「バーチャルな幽体離脱体験は死に対する恐怖を少なくする」は、VRテクノロジーの使用なしには実施が困難な「幽体離脱体験」に関する心理実験結果を報告している。

幽体離脱体験とは、臨死体験に伴って起こることが報告されている自分のカラダを上方から見下ろすような体験のことである。この体験に関する研究は、たとえ心理実験と言えども臨死体験を被験者にしてもらうことはできないので、せいぜい体験者の報告を収集することに留まっていた。

しかし、VRヘッドセットによってリアルなバーチャル体験が可能となったことによって、幽体離脱体験もバーチャルでありながらもリアルに体験できるようになったのだ。同論文は、こうしたバーチャルな幽体離脱を被験者に体験してもらった後に、アンケートを実施して意識の変化を調べるというものだ。

身体離脱体験と身体漂流体験の比較

同論文で行った幽体離脱体験は、VRヘッドセットを装着して被験者にVR動画を視聴してもらう、という手順で行われた。

実験に使われたVR動画は2種類ある。ひとつめのVR動画は、被験者のリアルなカラダと同じ位置にバーチャルなカラダもあることが一人称視点でわかるところからスタートする。その後、モーションキャプチャーを手に装着している被験者は、リアルなカラダを動かしてバーチャルなお手玉をする。バーチャルなお手玉をしていると、視線が徐々に上方に移動して、最後はバーチャルな自分のカラダを見下ろすようになる。視線の移動に伴って、バーチャルなボールも一緒に上方に移動する。この動画による体験は、「身体離脱体験(out-of-body experience:略してOBE)」と名付けられた。

もうひとつの動画は、視線が上方に移動するまではOBE動画と同じ内容である。違いは、バーチャルなボールが視線の移動に伴って移動しないことにある。つまり、被験者はバーチャルな自分のカラダを見下ろす時に、そのバーチャルなカラダがお手玉をしているのを見ることになるのだ。この動画による体験は、「身体漂流体験(drifting body experience:略してDBE)と命名された。

以下に、OBE動画とDBE動画を比較した動画を引用する。

OBEとDBEの違いが意味することは、視線がバーチャルなカラダから離れる時に身体活動の継続性を感じられるかどうか、という点にある。

OBE動画では、視線に移動に伴ってボールも移動するので、お手玉という活動がカラダを離れても継続しているように感じる。対して、DBE動画では視線が移動することによって、視線が継続している被験者とバーチャルなカラダが全く別のモノとなっているのだ。

心理実験では、32人の女性に対して、半数の16人にODE動画を見てもらい、残りの16人にDBE動画を見てもらったうえで、両方のグループに同じアンケートを実施した。

VR身体離脱体験後に「死の恐怖」に関する質問をすると

アンケートの設問は、「死の恐怖」に関する以下のような7つの質問に対して、「全く怖くない」を1、「とても怖い」を5として「死の恐怖」の程度を尋ねるものだった。

  • 1.死とは、完全な孤独である
  • 2.命は短くはかない
  • 3.死後には、生前のすべてが失われる
  • 4.若くして死ぬ
  • 5.死んでしまったら、どのように感じるか
  • 6.死んでしまったら、何も考えられず、何もできない
  • 7.あなたが死ねば、肉体は滅ぶ

以上のようなアンケートを実施してふたつのグループの回答を集計したところ、ODE動画を視聴したグループ、すなわち「身体離脱」をバーチャルに体験したヒトたちは「身体漂流」体験をしたグループより「死の恐怖」が少なくなった、という実験結果を得たのだ(下のグラフ参照)。

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上のグラフは、横軸に質問を1から7の順番に並べ、縦軸に死の恐怖の度合いを1から5で図示している。そして、黒い棒がDBE=「身体漂流体験」のグループの回答の分布を表しており、白い棒がOBE=「身体離脱体験」グループの回答分布を表している。同グラフから、「身体離脱体験」グループのほうが死の恐怖の度合いが少ないことがわかる。

以上のような実験結果となった理由として、「身体離脱体験」グループではバーチャルなカラダを離れても活動が継続したので、「肉体が滅んでも何らかの活動が可能である」という思いを実感できるから、と考えられるのではなかろうか。

もっとも、32人の女性だけを対象とした同実験だけからバーチャルな「身体離脱体験」の効用を結論づけるのは、早計であろう。とはいうのも、こうした実験がVRテクノロジーによって可能となったことを証明したことこそが、同実験最大の成果ではなかろうか。

バーチャルな幽体離脱体験に関する研究結果を紹介したVRScoutの記事
https://vrscout.com/news/researchers-vr-minimize-fear-of-death/

上記記事で紹介された論文「バーチャルな幽体離脱体験は死に対する恐怖を少なくする」の閲覧ページ
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0169343

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吉本幸記

Writer: 千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com