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AxonVRの触覚制御システムはVRの重さや温度まで感じさせる

2017/04/14 15:41

AxonVR-Platform

VRヘッドセットは、周囲の風景を遮断してVR空間を見せてくれる。しかし、VR空間のオブジェクトを操作するにはゲームパッドやハンドトラッキングコントローラーを使うことになる。

ハンドトラッキングコントローラーを使えばVRヘッドセットが見せる映像には手が表示されるので、まるで自分の手がVR空間に存在するかのようにオブジェクトを扱うことが可能だ。

だが、手を伸ばしてオブジェクトを掴んでも形や手触りはなく、ただ映像で「自分が手を伸ばして、物を掴んだ」と認識することしかできない。

そんな状況を変えようとしているのが各種の触覚フィードバックを与えるデバイスだ。触覚フィードバックを考えたプラットフォームの中でも、最も突き抜けた存在と言えるHaptXを開発するAxonVRのCEOがSeattle Businessのインタビューに応えた。

VRにリアルな感触を与える

AxonVRが開発しているHaptX技術は、VR体験に本物と区別ができないような「触感」を付け加えるための技術だ。この技術を使った特殊な布のような素材は、VRオブジェクトに触れることでそこに存在するという圧力、触ったときの形状、動き、そして温度さえも感じられるようにするために開発された。

動画では、これまでのVRではありえなかった熱さに驚く人たちの様子を見ることができる。HaptXがあれば、VRゲーム内の爆発や砂漠での冒険といったシーンをよりリアルに感じられるだろう。

AxonVRの設立者でCEOのJake Rubinは4年半前にセントルイスのワシントン大学を中退し、大学で勉強するために貯めていた資金をこの技術の開発に費やしてきた。シアトルに本拠地があるAxonVRは今年、初めての製品を出荷する予定だ。

AxonVR最初の製品は、VR空間を操作するだけでなくVR空間を感じられる手袋型のデバイスになると言われている。

Rubinは、既に目指しているビジョンを実現するための核となる技術の開発に成功したと話す。

「私たちは、ビジョンの実現に必要となる複数のコア・テクノロジーを開発しました。フルボディのVR体験を提供するためには、これらのテクノロジーを組み合わせるためにあと2年から3年かかるでしょう」

ここでRubinが言うコア・テクノロジーの一つが上記のHaptXだ。HaptXの薄くて柔軟な素材には「マイクロ流体アクチュエータ」が内蔵されており、圧力や温度を再現することができるようになっている。

このHaptX素材で手袋型のデバイスが作られれば、ユーザは掴んでいるものがボールなのか箱なのか、硬いのか柔らかいのかを判断できるようになるだろう。熱いものや冷たいものを持ったときにも、その感触が伝わってくる。

VR空間で動くための「外骨格」

AxonVRが開発するもう一つのコア・テクノロジーがHaptX Skeletonだ。HaptX Skeletonはまだプロトタイプの段階だが、装着した(あるいは乗り込んだ?)ユーザが自由にVR空間で活動できるようにしてくれる「外骨格」である。

ユーザの全身をほとんどカバーする構造になっているため、VR空間の地面に合わせて踏みしめる感覚を変えたり、道具を持ち上げると重さに応じて腕に負荷がかかったりといった表現をすることも可能だ。まさにVR空間にそのまま入り込んだような感覚を味わえる装置になるようだ。

Rubinによれば、HaptX Skeletonを使用してVR空間を走り、ジャンプし、よじ登ったり宙返りをしたりといったアクションも可能らしい。HaptX素材とHaptX Skeletonを組み合わせることに成功すれば、彼らの目指す「VR空間と現実の区別が付かない状態」も近そうだ。

これまでの動きとこれからのVRハプティクス

AxonVR CEO

Rubinはまだ25歳と若いが、長くハプティックVRデバイスの構想を練ってきたという。

「高校生の頃からフィクションを読んで、どうやってこのようなデバイスを実現するかというアイデアを考えていました。最初は脳とコンピュータを直接接続するインターフェイスによって目的が達成できると考えました。だから、ワシントン大学で生物医工学を学ぶことにしたのです」

しかし、彼は研究を始めてすぐにそのような脳とコンピュータを結ぶ方法が現実的ではないことを悟った。

RubinはVRヘッドセットの開発が進んでいるのを見て、彼のビジョンを実現するための方法がそこにあると気づいた。VRには触覚が欠けており、そこを補うことで目指すものに近づける考えたのだ。

映像と音響は既存のVRで上手く処理されており、味や匂いは体験の本質ではないというのがRubinの意見だ。

現在、彼はAxonVRが狙うマーケットとしてテーマパークやアーケードのようなエンターテイメント施設、軍隊、医療機関、そしてVRを活用する製造業を考えている。だが、価格を引き下げて消費者市場へ参入することも視野に入れているようだ。

「技術的に可能か」、そして「現実的な時間で実用化できるか」という質問には力強く答えたRubinだが、「消費者市場で幅広く利用できる価格になるか」については取り組んでいるところだとしている。

AxonVRと他のVRデバイス

AxonVRの他に無い点としては、熱さ寒さまでも再現しようとしているところだろう。テーマパークのライド型アトラクションでは、画面の映像に合わせて温かい風が吹き出してくる仕組みがあったりする。だが、これまでのVRでは熱を感じられなかった。

ハプティックデバイスでも、初期にプロジェクトが始まったものではHardlight VRのように圧力だけを利用している。

これはコントローラーの振動機能を全身に拡張したようなものだ。こうしたハプティックスーツがあればVRへの没入感が高まるのは間違いないが、あくまでもゲームのオプション機能といった存在である。

VR空間のオブジェクトに触れた感覚を再現しようとしているものだとVRgluvがある。こちらは、AxonVRのHaptXから温度を感じさせる機能を抜いたようなデバイスだ。2017年4月にVRgluv関連で何かが発表されると言われているが、まだ詳細は不明だ。

こうしたライバルとなるハプティックデバイスとの差別化要素として、熱の再現とフルボディのシステムであることが挙げられる。まずはフルボディに先駆けて手袋型のデバイスが発売されるようなので、VRgluvとの戦いになるだろうか。

価格の問題

AxonVR自体に目を向けると、最大の問題となりそうなのは価格だ。Rubinも最初は消費者市場を狙っていないようなので、かなり高コストのデバイスになりそうなのかもしれない。

特にHaptX Skeletonは一般ユーザ向けから商業施設向けに方針転換したVirtuix Omni並か、それ以上のサイズ感だ。少なくとも初期は、商業施設でのVR用になるだろう。

将来は家庭でもVR世界に本当に入り込む体験が可能になることに期待したい。

 

参照元サイト名:AxonVR
URL:http://axonvr.com/#haptics-that-feel-real

参照元サイト名:Seattle Business
URL:http://seattlebusinessmag.com/technology/axonvr-brings-lifelike-touch-virtual-reality

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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