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洪水の恐ろしさを啓蒙するVRアプリケーション「Immersed」

2017/04/20 18:06

    洪水への備え

    地震や洪水、火山の噴火といった自然災害は毎日のように起きるものではないが、対策されていなければ大きな被害をもたらすことがある。家屋や農作物への損害はもちろん、多くの人が亡くなることもある災害に対しては日頃の備えが肝心だ。

    日本では比較的頻繁に起きる災害の一つである地震だが、実は世界的に見るとそこまでメジャーな災害ではない。環太平洋造山帯の上に広がり、列島全体が火山だらけの日本はむしろ特殊な例だ。

    たとえばアメリカの場合、地震よりも洪水の被害が大きい。日本に比べれば国土が広く川も長い国だが、ときにはその分スケールの大きい嵐がやって来ることもある。

    まれにしか起きないからこそ、洪水のような災害への対策は後回しにされてしまう。そこで、アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)が洪水の脅威を伝えるVRプログラムを作成した。

    VRプログラム「Immersed」

    日本では「地震と津波が起きたときにどうなるのか」を体験できるVR映像がKDDIによって制作されている。政府が作成したものではなくKDDIによるものだが、地震大国ならではのVR利用である。

    今回洪水の恐ろしさを伝えるImmersedを制作したのはアメリカのFEMAであり、国を挙げて洪水への対策に取り組もうという意識の現れとも取れそうだ。

    ImmersedはHTC Vive用のアプリであり、「洪水が起きたらどうなるのか」そして「どのように洪水への備えをすれば良いのか」を地域の指導者に示すことが目的となっている。

    このプログラムでは、洪水への備えをしていないときに洪水が発生してしまったという設定で映像が作成されている。ユーザが見るのは、浸水した家屋、水没した道路、水没した建物の屋根から人が救助される場面の三つだ。

    その後、各シーンごとにどうすればその状況を防ぎ、少しでも危険を減らすことができるのかを示す構成となっている。このプログラムによって、洪水の危険性が高い地域に適切な排水システムや水はけの良いコンクリートを使った道路を普及させるなど、地方自治体の準備を進めさせることが狙いだ。

    アプリケーションの制作に携わったOgilvyのPete Nelliusは、これが単なる360度のVR映像ではないという。

    ユーザは、水没した道路や3フィート(90センチ)の水に浸かった家の周りを歩くことができるようになっている。

    災害への備え

    災害時も情報を伝える広報スピーカー

    「全ての地域が定期的に洪水に襲われるわけではありません。そのため、誰もが災害への備えを後回しにしてしまいがちです。すぐに準備をしなければならない、とは考えないからです。

    しかし、VRは他のテクノロジーにはできない形で洪水の経験を提供します」

    Immersedは洪水の被害を軽減するための地域密着プログラムの一つであり、地域の会議や情報の提供、災害対策のトレーニングといった内容が合わせて提供される。

    FEMAは、今月の末にこのプログラムを地域コミュニティへ提供する予定だ。

    スポークスパーソンは次のように伝えている。

    「研究結果は、VRがリアルの世界で人々の認識や行動に影響を及ぼすための強力なツールとなることを示しています。

    我々は地域社会と協力して、彼らが洪水の持つリスクを認識し、洪水の被害を抑えるためのスキルを身に着け、道具を用意する助けになりたいと考えています。

    また、Immersedは洪水の恐ろしさをよりリアルに伝え、ユーザに準備の意味を直接示すことができます」

     

    自然災害の危険を伝える方法としては、土地の海抜や地盤の強さのような情報を示したハザードマップ、災害を経験したボランティアによる講演といったものがある。だが、いずれも一般の人々の興味を引きにくいのが現実だ。

    マップを見ても、数字や色分けから危険性を実感するのは難しい。体験した人の話ならば臨場感はあるが、そうした公的なイベントに積極的に参加する人は多くない。

    たとえ一度は調べたとしても、記憶に残りにくいのも難点だ。自分が体験したことと違って、知識として本や他人からの話で得た情報は忘れてしまいがちだ。

    そういった事情を考えると、VRで洪水の恐ろしさを伝えるのは良い方法だ。

    VRならば、従来の映像と違って自分のこととして洪水を認識できるだろう。一般的な360度映像ではなくユーザが操作して移動できるVRコンテンツなので、より没入感が高いと考えられる。

    前半で洪水の恐ろしさを伝えたところで、きちんと対策を示していることもポイントだ。ホラーゲームのように怖がって終わるのではなく、「Immersedで体験したような目に遭わないために、今からさっきの対策をしておこう」と思わせる効果が期待できる。

    災害のシミュレーションは、VRが持つユーザの行動を変える力の正しい使い方と言えそうだ。

     

    参照元サイト名:PR Week
    URL:http://www.prweek.com/article/1430514/fema-taps-vr-bring-flooding-risks-life

    ohiwa


    ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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