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MyndVRは高齢者のVR利用を考える

2017/04/24 17:18

VRコンテンツによって高齢者の状態を改善させることを目指すMyndVR。まだ医学的な裏付けが取れていないが、利用したユーザには笑顔が増えるという。高齢化が進む中で、大きな需要が見込まれる。

VRヘッドセットを付けた高齢者

VRヘッドセットを使えば、椅子に座ったままで、あるいはベッドに横になったままでも自由な体験が可能になる。行ったことのない場所を訪れたり、かつて行った場所を再訪したり、フィクションを主人公の視点から楽しんだりと利用方法は様々だ。

「外出が困難な高齢者にVRを使ってもらおう」というアイデアも今や奇抜なものではない。Upload VRが紹介するMyndVRが目指すのは、高齢者のための究極のVRプラットフォームだ。

体験が与える影響

音楽とアルツハイマー病を描いた『パーソナルソング』

アルツハイマー病は、高齢者の認知症によく見られる原因の一つだ。

アルツハイマー病では脳の組織が変性することで記憶力や思考能力が徐々に失われ、自分の名前や家の場所を含む激しい物忘れや人格の変化などが起きる。進行すると幻覚や運動障害も発生し、日常生活すら困難になってしまう。

アルツハイマー病を現代の医学で完全に治すことはできないが、そのメカニズムについての解明は進み、投薬によって症状の進行を遅らせることもできるようになってきている。

脳の特定の領域が障害されることで起きるアルツハイマー病の症状には、音楽による刺激が効果的なことがある。過去に愛した音楽を聴くことで関連する記憶を呼び覚まし、表現力を回復させ、気分の良い状態にすることができるようなのだ。

音楽とアルツハイマー病の関係を追ったドキュメンタリー映画は、日本でも『パーソナルソング』として上映され、DVDも販売されている。

VR体験で刺激する

MyndVRの共同設立者、Chris Bricklerはこのドキュメンタリーに大きな衝撃を受けた一人だ。彼はVRを使えば音楽と同様のことが、より大きな規模で可能なのではないかと考えた。

BricklerはShawn WioraとともにMyndVRを設立し、これを現実にしようとしている。

彼が考えているのは、高齢者の状態に合わせたコンテンツを提供する医療品質のNetflixとでも言うべきものだ。感情を引き出したり、必要なときには落ち着きを取り戻す助けになったり、ときには意識をはっきりさせるような、そんなコンテンツが用意されている。

彼はUpload VRに対してこう語っている。

「私たちは、VRで23歳のゲーマーを満足させようとは思っていません。

私たちはこの技術を使って、人類全てのためになるヘルスケアソリューションを作ろうとしているのです」

MyndVRの現状

Bricklerは大望を語るが、MyndVRの現状がまだその段階から遠くはなれていることも認識している。

MyndVRがこれまでに行った試験は正式な、医学的に間違いのないものではない。彼らは他の団体と連携し、信頼のできる試験結果を得たいと考えている。

「VRが高齢者にもたらす効果を測定するのは、非常に困難です。それでも、私たちはそのために臨床試験に入ろうとしています。

それに、測定するまでもなくユーザには笑顔が増えます」

将来への期待

MyndVRのヘッドセットを付けた高齢者

まだ確かな試験によって裏付けられた成果は挙がっていないものの、観察のレベルではMyndVRの効果が有望視されている。

彼らはこれまでに、テキサス大学ダラス校の学生たちと協力していくつかのVRコンテンツを制作してきた。BricklerとWioraは、さらに多くのコンテンツを作ろうとしている。

その人に合ったコンテンツを選べるように、豊富なコンテンツを用意しておく必要があると考えているからだ。

過去の写真をバーチャルな家の中に表示したり、過去の映像をテレビに表示したりといった将来のコンテンツに関するアイデアも持っている。

こうした刺激によって、眠っている神経の可塑性が呼び覚まされる効果があるのではないかと期待が集まる。神経が繰り返し刺激されれば、かつての接続が復活したり、新しい接続が生まれるかもしれない。

高齢者の増加は世界的な傾向であり、それに合わせてアルツハイマー病を患う患者の数も増えている。今後、MyndVRのようなサービスの需要が増大を続けることが予想されている。

 

懐かしい音楽や香りといった要素によって刺激されることで、普段は忘れていることを思い出すときがある。「自分が何をしていたのかわからない」状態になったときに、さっきまでやっていた行動をなぞってみたら思い出せたという経験のある読者もいるかもしれない。

人間の記憶は様々な要素が結びついて保存されているらしく、何かの刺激で急に戻ってくることがあるものだ。没入感の高いVRによって昔を再体験できるようなコンテンツがあれば、忘れていたことも思い出せるかもしれない。

症状の進行によっていつも不機嫌になってしまった高齢者の気持ちを落ち着かせるようなコンテンツも、役に立ちそうだ。本人にとっては気分が良い状態で過ごせる方が良いし、家族や介護を行う側にとっても助けになるだろう。

高齢者のためのVRプラットフォームが成功すれば、世界中で利用されるに違いない。

 

参照元サイト名:Upload VR
URL:https://uploadvr.com/vr-good-myndvr-wants-make-ultimate-platform-help-elderly/

参照元サイト名:パーソナルソング
URL:http://personal-song.com/

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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