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Oculus Researchが高精度かつ低コストなVR用スタイラス「DodecaPen」を研究

DodecaPen

空中で動かすことで文字が書けるスタイラス

VRデバイスを使うとき、ユーザが見ることができるのはVR空間だけになる。ヘッドセットを「跳ね上げる」ことで外を見られるようになっているデバイスも存在するが、VR体験では基本的に視界が遮られてしまう。コントローラーを握った状態で完結する操作ならば周囲が見えないことは問題にならないが、文字の入力やVRアートの創作となると不便なこともある。

Oculus Reseachで研究されている「DodecaPen」は、VR空間での手書き文字入力や絵の創作といった作業を変えるかもしれないデバイスだ。入力の精度が高く、コストも小さいとされている。

テキスト入力に使える方法

VRスタイラスを使う様子

圧力も感知するVR用スタイラスペン

テキスト入力の不便

一般的なVRアプリケーションでは、ハンドトラッキングコントローラーのみで操作が完結する。しかし、VR空間でハンドトラッキングコントローラーを握ったままテキストの入力をするとなるとソフトウェアキーボードを使うことになるだろう。

アプリ名の一部を入力して検索するくらいならばともかく、長い文章を記入しようと思うとこの操作はキーボードに比べて時間がかかってしまう。かと言ってVRヘッドセットを外さずにキーボードを使うのは難しい。

普段からパソコンを使い慣れていてタッチタイピングが可能だとしても、まずキーボード上のホームポジションを探すのが一苦労だ。入力を終える頃には、どこにコントローラーを置いたか忘れてしまっているかもしれない。今度は手探りでコントローラーを探すことになる。

音声入力

VRヘッドセットを付けたまま可能な文字入力操作として注目されているのが音声認識による入力だ。

声を出すだけならば、ヘッドセットが邪魔になることはない。最近の音声認識技術の進歩によって内容次第でかなり高い精度で認識することが可能となっているため、短いメッセージを送信するくらいならば音声だけで済ませることも現実的になった。

慣れたユーザによるキーボードでの入力に比べればスピードが遅い、長時間続けると喉が疲れてしまうといった欠点はあるものの、代替手段としては有効だ。機械の扱いに不慣れなユーザでも使いやすいため、VRデバイスの普及を考える上で期待される方法でもある。

手書き入力

音声を使う方法の他に、ユーザの手書き文字を認識させる方法もある。OCR技術の精度が上がっているため、ユーザがスタイラスやハンドトラッキングコントローラーを使って書いた文字をテキストデータに変換することが可能だ。

この方法も入力のスピードだけならキーボードには劣るが、タイピングが苦手なユーザにとってはむしろ使いやすいかもしれない。また、トラッキング精度の高いスタイラスであればVRアートの制作にも使える。

DodecaPen

間口の広いハンドトラッキングコントローラー

Googleの『Tilt Brush』のようなVRアプリで3D作品を制作する場合、ハンドトラッキングコントローラーを使って直感的な操作が可能なのが特長だ。

パソコンで3DCGを作るよりも感覚的に扱うことができ、一般のユーザが創造の世界へと足を踏み入れやすくなる。特別な道具を使うよりも、直接手を使って操作する方法が身につけやすいのは当然だ。

しかし、限界もある。ハンドトラッキングコントローラーのトラッキング精度はVRゲームの操作には十分だが、緻密なアート作品を仕上げようと思うと物足りないこともあるだろう。

細かな操作に適したスタイラス

そこで、DodecaPenのようなスタイラスの出番だ。

DodecaPenでは、1台のカメラと3Dプリントされた十二面体によってスタイラスのトラッキングを可能にしている。過去にVive Trackerを使ってVR用のスタイラスを制作する試みもあったが、複数のカメラやVive Trackerを使う方法に比べると、コストはかなり小さくなるはずだ。Trackerに比べて十二面体が小さいため、本体サイズを小さくできる点も強みである。

高精度トラッキング

DodecaPenのトラッキングの精度は0.4mmと高い。これは、10台のカメラ(合計画素数17メガピクセル)を使うOptiTrackのモーションキャプチャシステムに匹敵する精度だという。

DodecaPenのシステムで使うカメラは特別なものではなく、1.3メガピクセルの既製品だ。ありふれたカメラを使っているにも関わらず高い精度でトラッキングが可能なのは、十二面体という特殊な形状によるところが大きい。

十二面体の各面には、それぞれ異なるマークが印刷されている。カメラが捉えたこのマークの位置や向きから、ペンの位置が確定されるのだ。十二面体という形のために、ほとんどどのような状況でも二つ以上のマークがカメラに向けられるという。

本当にペンで書いたような線が引けるため、細かいアート作品を描くときやきれいな文字を入力したいときに活躍するだろう。

単一カメラの限界

高精度が特長のDodecaPenだが、カメラを1台しか使わないシステムゆえの弱点もある。1台のカメラで十二面体を撮影しているため、周囲に陰ができて十分な明るさが得られないと精度が維持できないのだ。

また、他の低コストなモーショントラッキングシステムと比べても速度が遅いという。カメラが撮影したマーカーをソフトウェアが認識するために、精度の限界(映像のブレによるもの)や速度の限界(認識時間によるもの)が生まれてしまう。

こうした限界は、ペンの側にボタンを追加したり、撮影するカメラを増やしたりといった方法で拡張することが可能だ。しかし、使用する装置が増えればシステムのコストが大きくなってしまう。ソフトウェアもより複雑になる。

 

精度の高さは、動画からも明らかだ。文字や絵を素早く・正確に入力するためのツールとして、未来のVRではDodecaPenから進化したデバイスが使われるようになるのかもしれない。

チームはシステムの欠点も把握しているので、1カメラの家庭用パッケージと複数のカメラを使うプロ向けパッケージ…といった形に進化していくことも考えられる。

 

参照元サイト:Road To VR

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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