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精神疾患の治療ツールとして活用されるVR!悪夢障害の治療にも効果が実証される

2019/02/17 22:00

没入感のある体験をもたらすVRは、精神疾患の治療にも役立つツールとして注目されています。

米国では睡眠障害の一種である悪夢障害の治療にVRを用いる研究が行われており、VRが治療に大きな効果をもたらすことが明らかになっています。


VRが悪夢障害の画期的な治療ツールに!米国で行われている研究

睡眠中に悪夢を見ることは誰しもが経験のあることですが、悪夢障害では不快な夢を見て睡眠中に何度も起きたり、不安や恐怖にかられたり、起きた後も悪夢の内容をハッキリ覚えている、などの症状が挙げられます。

こうした状態はストレスの原因になり、日常生活に支障をきたす可能性もありますが、現在一般的に用いられている治療法は必ずしも効果的ではありません。

イメージ療法では不十分

現在、悪夢障害の治療に最も効果的とされているのが「イメージリハーサル療法」というもので、これは患者が見た悪夢を悪いイメージから良いイメージへと置き換えるように指導する方法です。

ですが、この方法は患者自身のイメージ力やモチベーションに大きく依存するため、必ずしも効果がある訳ではなく、治療を受ける患者によって効果の程にバラつきが出てしまいます。

特に、患者が子どもである場合はこの傾向が顕著になる一方で、米国では幼少期のうち1/2~2/3の割合が悪夢障害に罹っていると言われています。

VRが画期的な治療法に?

ですが、従来のイメージリハーサル療法にVRを活用することで、治療効果を上げようとする取り組みが行われています。

この手法は「ReScript」という名称で、患者はVRヘッドセットを装着して、VR空間の中で刺激の強いイメージに触れることで、悪夢障害によるストレスや不安を軽減します。

VRを用いた療法には効果がある

実験では、悪夢障害を抱える患者19人が被験者として参加し、約1カ月間にわたってVRを用いたイメージ療法を行いました。

被験者はVR空間の中で、例えば実物大の巨大なサメがこちらに向かって泳いでくるような、ユーザーに恐怖を与えるようなイメージを見ます。

そしてコントローラーでこれらのビジュアルに絵を描くなどのインタラクションを通して、イメージが与える恐怖感を減らしていきます。

そしてReScriptの被験者は週に2回ずつ、不安の程度や悪夢によるストレス、その影響についてモニターしました。

こうした実験の結果、VRを用いた療法は患者が感じるストレスや不安などを著しく低減できることが明らかになっています。

VRを活用するメリット

従来のイメージリハーサル療法は患者のイメージ力に頼るのに対して、ReScript療法ではVRで現実的で詳細なイメージを与えることが出来ます。

ReScript療法を研究するボストン大学の神経学研究者・Dr. Patrick McNamaraによると、この療法は暴露療法に基づいており、患者が恐怖を感じるような刺激を徐々に与えていくことで、やがて恐怖に対する反応そのものを消失させていくとのことです。

それによって、悪夢障害の症状をスローダウンさせたり、もしくは症状が発展してより重度な精神疾患へと発展することを防ぐことへとつながります。

また、従来のイメージリハーサル療法の効果が出にくい子どもであっても、VRを用いた療法であれば効果が期待できそうです。



精神疾患全般の治療にVRは効果的?

これ以外にも、VRはうつ病や社会不安障害などの広範にわたる精神疾患の治療への活用が行われています。

例えば、米国のLimbixという企業はVRを用いた精神疾患用のソリューションを開発しており、おもに精神疾患の治療を行うセラピストをユーザーとしています。

うつ病の治療にVRは効果的?

現在、日本でもうつ病にかかる人が多数いますが、VRはうつ病の改善にも役立つとして注目されています。

Limbxによるコンテンツは、おもに青春期のうつ病の治療を目的としており、VRヘッドセットを着けて一連のセッションを体験することで、うつ病の克服につながる成長志向を植え付けることを目的にしています。

また、このコンテンツはうつ病の調査の他、青春期の人が治療を行う際に自分が独りでないことや、うつ状態の感情や課題をどのように克服すべきかを指導したりなど、様々なアプローチによって病状の改善を目指しています。

コンテンツはほぼ完成しているとのことで、2019年初旬からは臨床試験を開始する予定とのことです。

社会不安障害の克服にも

また、大勢の人の前に出ると過度に緊張して、不安や恐怖を感じてしまう社会不安障害の克服にも、VRが役に立つとされています。

このプログラムの開発にはスタンフォード大学も参加しており、VRを通して様々なシナリオを体験して、不安障害を抱える人が現実で直面し得る状況をVRで疑似的に体験します。

例えば、誰でも緊張しがちな就職面接をVRで体験したり、大勢の人が集まるイベントにVRで疑似的に参加することを通して、知らない人や大勢の人との交わりを体験します。

こうして、ユーザーはVRで他者と接することを体験的に学び、その際に起こる不安に対するマネジメント能力を養います。

VRを用いた治療用ソリューションは、VRデバイスのみで導入できる手軽さもあり、病院だけでなく学校や職場など様々な場所で普及していく可能性があり、大きなニーズを秘めています。

まとめ

米国では、悪夢障害をVRで緩和・治療しようとする方法の研究が行われています。

この方法では、従来の治療法として一般的だったイメージリハーサル療法よりもより大きな治療効果を上げることが出来ることが、実験によって立証されています。

また、VRはうつ病や社会不安障害などの様々な精神疾患の治療にも役に立つとされており、今後メンタルヘルス分野はVRの普及が進んでいく分野として可能性があります。

参考サイト:VRScout









Daisuke


フリーランスの翻訳ライター。XR、VTuber、人工知能を専門に各種メディアに寄稿しています。 Twitter: https://twitter.com/dsiwmr

 

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