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ロールス・ロイス・ホールディングスの新エンジン開発を助けるVR技術

2017/10/02 18:10

ロールスロイスもVRを利用する
ロールスロイスもVRを利用する

ロールスロイスもVRを利用する

多くのグローバル企業で、新製品のデザイン・設計を行うときにVR技術の助けを借りるようになっている。VR空間で設計を行うことで実際にプロトタイプを製造しなくても各種試験を行えるため、コストの削減に繋がるというのがその大きな理由だ。

ロールス・ロイス・ホールディングスは現在「世界最強の航空宇宙ギアボックス」を開発中であり、その作業にはVRが利用されているという。

ロールス・ロイス・ホールディングスとVR

エンジン

自動車会社とエンジンメーカー

単にロールス・ロイスと言うと高級車のメーカーというイメージが強いかもしれないが、実はロールス・ロイスの名前を持つ企業は2つある。どちらも同じ企業が起源ではあるのだが、現在は独立した企業だ。

一方はロールス・ロイスのブランドを持つ乗用車を製造する自動車会社のロールス・ロイス・モーター・カーズ。おそらく一般の人がロールス・ロイスと聞いて想像するのはこちらだろう。

もう一方がエンジンの開発にVR技術を活用しているロールス・ロイス・ホールディングスだ。こちらもエンジンを作っているので似ている部分はあるのだが、自動車ではなく航空用のエンジンが主力商品である。防衛航空宇宙分野、民間旅客機、船舶用エンジンの他に発電機なども扱っている。

このロールス・ロイス・ホールディングスが開発中の新エンジンプロジェクトでVRが利用されているのだ。

エンジン開発に利用されるVR技術

同社のVR利用については、先月CTOのPaul Steinがウォール・ストリート・ジャーナルに対して語っている。

同社がVR技術を導入した当初の目的は、既存製品を製造する業務の効率化支援だったという。しかし、VR技術は製造業務の効率化だけでなく新しいエンジンを開発する上でも利用できることが判明した。

現在では、2025年のデビューを目指して開発が進められているUltraFanジェットエンジンのプロジェクトでVR技術が利用されているという。

エンジンのギアボックス

エンジンの動作効率が低ければ、燃費が悪くなる、駆動音が大きくなるといった問題を引き起こす。エンジン全体の効率を向上させ、そうした問題を解決するために重要なのがギアボックスだ。

ロールス・ロイス・ホールディングスは現在、ギアボックスがエンジン前方のファンとエンジンを調整し、効率よく動力を発生させるシステムを目指してテストを行っている。

新型エンジンは初期のものに比べて燃費が25%向上し、騒音も低減されていることを求められている。これを実現するためには、ギアボックスの改良が欠かせない。

このようにエンジンの重要なパーツであるギアボックスだが、その大きさは直径3フィート(0.9メートル)未満と小さなパーツだ。その小ささゆえに、組立工程が難しいものとなる。

ロールス・ロイスのVRシステムは、このギアボックスを組み立てるエンジニアの助けとなる。狭い空間内で、パーツが他のパーツと接触する危険があると警告が行われるのだ。

設計時・組立時にパーツが入らないということがないように、設計支援や従業員のトレーニングでVRが活用されている。

VRによるコストの削減

ロッキード・マーティンで利用されるVR

ロッキード・マーティンで利用されるVR

VRやモーショントラッキングの技術を利用して大きなコストの削減に成功した企業としては、ロールス・ロイス・ホールディングスと同じく航空機も扱うロッキード・マーティンがある。こちらは民間機ではなく軍用機が専門だが、やはりVRによってコストカットを行っている。

プロトタイプ制作費用

何か大きなプロジェクトを動かす場合には、本番の前にテストをしてみることでリスクを抑えられる。テストを怠って不良品を大量に製造してしまうよりは、プロトタイプの時点でデザインを修正する方がコストを抑えられる。

しかし、航空機のように大きな工業製品になるとプロトタイプを作るだけでもそれなりの金額が必要になってしまう。設計を少し修正して、新しくプロトタイプを製造して…と繰り返せば、時間的にも金銭的にもコストがかさむ。

それを防ぐために使われるのがVR技術だ。VR空間では材料費も工場を動かすスタッフの報酬も不要ですぐにプロトタイプを作れる。

リモート会議

VRを採用することによるもう一つのメリットとして、遠隔で会議が行えることも挙げられる。

従来の物理的なプロトタイプを作る方法ではエンジニアが現場に集まり、実際にプロトタイプを見ながら設計の修正点を話し合う必要があった。しかし、VRプロトタイプならばそれぞれの社員が別の場所から同じVR空間に接続することも可能だ。

プロトタイプを製造する資金と時間が不要になるだけでなく、スタッフが集まる必要もなくなる。作業フローの高速化や出張費用の削減効果が期待できる。

VR導入の節約効果

ロールス・ロイスはVRがプロトタイプ設計と修正を繰り返すことによる時間的コストを減らしてくれるとしているが、当然金銭的にもメリットはあるはずだ。

ロッキード・マーティンの場合、VRの導入によって年間1,000万ドル(11億円)もの額を節約することができているという。VR導入のコストは500万ドル程度とされているので、節約効果はかなり大きい。

より安価なOculus Riftを採用したロッキード・マーティンに比べるとHTC Viveを選んだロールス・ロイスの方が導入コストが大きめかもしれないが、それでも十分な効果が得られるはずだ。

 

VR導入の事例として、工業分野でデザインやテストに利用されることは多い。デバイスの価格下落が続いていることもあり、今後もこうした事例は増えていくとみられる。

現時点では様子見という企業も、より高性能な第二世代のVRヘッドセットが出てくれば動き始めるかもしれない。

 

参照元サイト:Manufacturing.net


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