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VRトレーニングはマニュアル動画よりも効果的(Google実験)

2017/08/31 10:47

VRトレーニング

VRトレーニングでエスプレッソマシンの使い方を学ぶ

VRを使ったシミュレーションは、VR技術の利用法として一般的なものになりつつある。初めてレストランで働く場合や高価な機械を扱うとき、難しい手術の前などにVRを使ってシミュレーションを行うことで、本番の練習になると言われてきた。

実際にVRトレーニングを受けた従業員の業務効率が向上する、スポーツ選手の試合における判断速度が上がるといった効果があるとされていたが、その実情ははっきりしていない。

Googleが行った実験によれば、VRを使ったシミュレーションを受けた被験者はマニュアル動画を見た場合に比べて少ない回数で自信を持つことができ、実際にミスも少なかったという。

Googleの実験

コーヒー豆とカップに入ったコーヒー

GoogleのDaydream Labsでは、VRのシミュレーションを使った学習の効果を調べるために実験を計画した。

内容

この実験では、エスプレッソマシンを使ってコーヒーを作る方法を被験者に学んでもらう。

VRを使うグループは、3Dで作られたエスプレッソマシンを操作するVRシミュレーションを使って学ぶ。VRコンテンツにはマシンの操作を学べる詳細なチュートリアルも用意されたので、バーチャルでマシンを触りながら操作を覚えることが可能だ。

対照群となる別のグループには、VRではなくYouTubeの動画を使って同じ操作を学んでもらった。

彼らはVRまたはYouTubeの動画でマシンの使い方を好きなだけ繰り返しトレーニングし、自信が付いたら実際にマシンを使ってエスプレッソを淹れるように指示された。

結果

被験者は自分が満足するまでトレーニングを繰り返すことができたが、その回数はVRを使うグループと動画を使うグループで異なった。

VRを使ったグループが平均2回だったのに対し、動画を使ったグループでは3回トレーニングを利用していた。

さらに、VRで学んだグループはミスが少なく、エスプレッソを完成させるまでの時間も短かった。

実験からの学び

実験に使用されたVRコンテンツ

用意されたヒントボタン

この実験は初期の例だが、VRを使ったシミュレーションが動画を使う場合よりも効果的である可能性を示すものとなった。同時に、VRを使ったトレーニングの特徴もいくつか判明している。

フィードバックの限界

Google Blogの投稿では、コーヒーを淹れるというテーマが良くなかったとされている。手作業で実際にコーヒーを淹れる感覚は、シンプルなハプティックフィードバックで再現できるものではない。

また、コーヒーを淹れるときには熱湯を使う。シミュレーションでどんなに警告したとしても、熱いスチームノズルに近づきすぎてしまう人がいるので被験者が火傷しないようにする人が必要だった。

この事実は、VRによるトレーニングを使った学習が向いていないスキルも存在するということを示唆している。

将来的にリアルな感触を再現できる手袋型デバイスが主流になれば状況は変わるが、現在のVRを使ってトレーニングしやすいのはものを動かしたり、ボタンを押したりといったシンプルな動作だけだ。

加えて、再現度の高さも重要となる。デジタルで再現された体験と実際の感覚があまりにかけ離れたものであれば、VRを使ったトレーニングの有用性は低くなるだろう。

指示は無視される

VRトレーニングで問題となったのは、ユーザが指示に従わないことだという。ゲームであれば、チュートリアルを無視されてもユーザが楽しめれば成功だ。だが、トレーニングの指示が無視されるのは問題になる。

目の前に書いてなければ手元に集中しているせいで目に入らず、音声で指示をするのでは遅すぎて指示を待たないユーザが出た。

マシンの下にヒントボタンを追加する方法も試みられたが、ユーザはそれを使うのがカンニング行為のように感じたようだ。そして、1ステップが2ステップ作業を進めた頃にはヒントボタンの存在を忘れてしまった。

多くの指示はユーザに見逃されるか、目に入っても無視されてしまう。そのため、チームは複数の支持方法を組み合わせる必要があったという。

次に操作するものを緑色の大きなマーカーで示す方法は上手く働いていたが、効果的に指示を伝えるためにはまだ改善の余地があるようだ。

トラッキングが難しい

VRを使ったトレーニングではユーザの行動をトラッキングできることも利点とされているが、複雑な内容になると完全なトラッキングを行うのは難しい。

ユーザに複数の選択肢を与えれば与えるほど、考えられる状態は増えていく。ミルクだけがカップに入っている状態もあればコーヒーだけが入っている状態もあり、両方が入った状態も考えられるからだ。

フローチャートでユーザの行動を把握するよりも、ゲームのようにユーザが重要な行動を行ったかをフラグ管理する方が有効かもしれない。

 

VRを使った学びには限界もあるが、ハードウェア・ソフトウェアの進化によってその限界も拡張されるはずだ。

今回の実験ではユーザが火傷しそうになる場面もあったようだが、熱のフィードバックが実現すればその可能性は低くなるだろう。

 

参照元サイト名:Google Blog
URL:https://www.blog.google/products/google-vr/daydream-labs-teaching-skills-vr/

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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