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ARのような技術が労働者の能力を「拡張する」 - VR Inside

ARのような技術が労働者の能力を「拡張する」

     

過酷な環境にも耐えるARグラス

人間の身体能力は動物の中でも低い方だが、自分の能力を「拡張する」ための多くの道具によって高い作業効率を実現している。道具の進歩によって、産業界は何度か大きな変化を経験してきた。

蒸気機関の発明やライン組み立てシステムの導入、そしてコンピュータの発明が産業を変えた。今度は、ARデバイスのように人間の能力を拡張するテクノロジーが労働を変えようとしている。

人間とロボットの共存

スーツがあれば重い物も運べる

ロボットは人間の仕事を奪う?

ロボットの発展・産業の機械化について常に恐れられているのが、機械が人間の仕事を奪うことだ。ラッダイト運動では、毛皮の織物を作る機械や脱穀機が敵視され、ときに破壊された。現代では対象がコンピュータやロボットに変わっただけである。

確かに、ロボットの方が人間よりも得意な単純作業というのは存在する。特別に汚れているわけではない床を一通り掃除するとか、何かの数字を監視して例外が発生したら担当者に知らせるといった作業であれば、ロボットの方が優秀だろう。

あるいは、高温になる現場やガス・有機溶剤を扱う現場でもロボットの方が使い勝手が良いかもしれない。人間にとっては危険だったり不可能な作業であっても、適切に設計された機械ならばこなすことができる。

だが、ロボットが近い将来人間に取って代わるのは難しい。少なくとも現時点では、ARデバイスのような道具で拡張された人間の方が柔軟に対応できるからだ。

力の強化

人間とロボットを組み合わせた最もシンプルな形が、一種のパワードスーツだ。このスーツを使うことで、労働者は重機並の馬力を発揮することができるようになる。

現在の倉庫業務や工事現場では、人間が生身で重い物を運ばなければならない。重労働は疲れるだけでなく、怪我の危険もある。人間が運ぶには重すぎる大きなものはフォークリフトやクレーンで移動させることもできるが、こうした機械は人間ほど小回りが利かない。

ロボットスーツならば大型の機械よりも自由に動ける上に、生身で働くよりも疲れにくく、怪我の危険も小さくなる。

安全の確保

機械は人間の安全のために利用することもできる。単に危険な作業を遠隔操作のロボットで行うのも、一つの方法だ。

危険が伴う現場で働く労働者には、脈拍や体温といった健康状態を確認するための情報を収集するウェアラブルデバイスを着用してもらうのも良いだろう。基準の状態を外れたら通知を行うようにすれば、体調不良の早期発見に繋がる。

化学物質や放射線のような目に見えないものに対しても、こうしたセンサーで情報を集めるのは有効だ。本来検出されないはずの成分が検出されたり、基準以上の時間曝されてしまったりした場合には作業を中断しなければならない。

ARで情報を表示する

AR(拡張現実)もしくはMR(複合現実)もこうした労働者を助ける技術の一つだ。

パイロットを助けるAR

戦闘機のパイロットは、ヘッドセットを使うことで計器に目をやらなくても重要な情報を確認することができるという。その技術を応用したサイクリストのためのスマートグラスも開発されている。

乗り物の運転中に脇見をするのは危険だが、情報を確認しなければならないこともある。この技術があれば安全に、かつ一時停止して効率を落とすことなく情報を確認できる。

工場で使われるAR

ARが有効なのは運転中だけではない。一般的な工場や工事現場での作業でも、ARヘルメットは有効だ。

このヘルメットには、建物の立体図面データが格納されている。本体に搭載した複数のカメラによって着用者の現在位置を把握し、図面と重ねて表示することが可能だ。行うべき処置を素早く把握し、図面との差があればヘルメットのカメラで現場を撮影してそのまま上司に送ることもできる。

後で上司に報告して相談するのではなく、その場その場で判断を下せることで作業の効率化に繋がるとされている。

各種センサーとの連携

サイクリスト用のスマートグラスでは、着用者の心拍計と連動して心拍数を表示することが可能だ。工事現場向けのスマートヘルメットでは、通常のカメラだけでなく熱を感知するカメラも搭載されているので画面に温度を表示できる。

こうしたセンサーからの情報をリアルタイムに労働者に伝えることで、レスポンスの高速化が期待できる。

自分の心拍数や体温が分かれば作業中の熱中症などにいち早く気づくことができるだろう。機械の温度が分かれば、毎回温度を測定して操作する必要はなくなる。もしも異常な温度になっている場合には、次の測定を待たずにその場で知ることができる。

ARはあらかじめ決められたマニュアルのような情報を表示するだけでなく、現場の情報を作業者に気づかせるためのツールとしても有用だ。

 

未知のものであるだけに、新しいテクノロジーが恐ろしく感じられてしまうのは仕方がないことではある。誰でも知らないものには不安を感じるし、否定したくもなる。

しかし、そのテクノロジーが仕事を安全に、楽にしてくれるかもしれない。むやみに導入を拒むのではなく、活用する方法を考えることが必要だ。

人間の能力を拡張する技術には、良い意味で産業を変える力がある。

 

参照元サイト名:The Conversation
URL:http://theconversation.com/introducing-operator-4-0-a-tech-augmented-human-worker-74117

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。