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MRデバイスで職人芸を素早く伝授、製造業向けMRソリューションを提供開始

高知県香美市を拠点にする有限会社宮村鉄工は、建築用の鉄骨製造にMRデバイスを活用するソリューションを開発し、有償トライアルの提供を開始しました。

本ソリューションは株式会社NTTドコモが主催するイノベーション促進プログラム「39works」から生まれたもので、ドコモの技術提供により有限会社宮村鉄工がソリューションの運用、提供を行います。



MRデバイスによって職人技を伝授

本ソリューションは製造業の現場にMRを活用することで、若手の技術者の育成や獲得、ミスを減らすことによって作業効率を改善したり、また3K(きつい、汚い、危険)といった業界に対するネガティブなイメージを払拭し、先進的でポジティブな印象を与え、従業員のモチベーションを改善することが期待されています。

同社はMR技術が製造業にもたらすメリットを証明するための実証実験を行いました。

実験ではマイクロソフトのMRデバイス「HoloLens」を使用し、実際の鋼材に設計図に沿った3Dのホログラムを投影し、完成物のイメージや正確な位置、大きさなどを、より直感的に把握することができます。

図面を見ただけで、そこから完成物の立体的なイメージを頭の中に描くことは、これまでは長年の経験を積んだ熟練工のみが行える職人技でした。

しかし、熟練工の数が減る一方で、若手技術者の数も不足しています。本ソリューションはこうした状況を改善するものです。

MRが製造業にもたらすメリット

製造業にMR技術を活用することで得られるメリットは複数あります。

メリット①:熟練の技術者のみが得ることができるスキルを、若手の後継者に伝授しやすくなる

これまでは熟練工が頭の中でのみ描くことができたイメージを、MRデバイスを用いることによって可視化することが可能になり、情報共有のスピードが向上します。

メリット②:完成物の様子を瞬時にホログラム化し図面をより早く正確に把握することができる

図面に描かれている完成物の様子を瞬時にホログラムで立体表示することが出来るため、図面を正確に、より早く把握することができます。

これによって、従来よりも作業に要していた時間を短縮することができます。

メリット③:製造業にありがちだった3Kというマイナスイメージを払拭

製造業に対してありがちだった、3K(きつい、汚い、危険)というマイナスな印象を払拭して、難しい動作や直感を必要とせず、

「習得することが難しくない」

というポジティブな印象を生み出すことができます。

本ソリューションはクラウドを用いたWebサービスと、デバイス(Microsoft HoloLens)によって構成されています。

製造業で最も活用されている3D CADソフトを用いて制作したデータを使用することが可能で、このデータをクラウド経由でMicrosoft HoloLensで読み込み可能な3Dデータに自動的に変換します。

このため、CADで設計したデータを手間をかけずに、素早くホログラムに変換することができます。

こうしてHoloLensに読み込んだ設計図のデータは現実世界にホログラム投影されるので、作業員はデバイスを装着して、完成図を直感的に把握しながら作業を行うことができます。



実証実験によって証明された効果

有限会社宮村鉄工は、MRを製造現場で活用することで得られるメリットを証明するための実証実験を行いました。

実験の結果は、MRが製造業にもたらすメリットを確かに証明するものでした。

複雑な構造の製品の製造を行う場合、従来では熟練工が50分程度かけて行う作業を、本ソリューションを用いたことによって、製造経験のない事務員がわずか15分間で行うことができました。

ミスの発生率を低下させ、かつ製造にかかる時間を大幅に削減することができました。

実験では、H-350x175x7x11の「寄棟造の隅棟部」を使用しました。

製造に必要な複数のプロセスにおいて、MRソリューションを用いることによって、未経験であっても作業効率を大きく改善できることが証明されました。

作業内容 熟練工(入社30年) 一般工(入社6年) 未経験の事務員、本ソリューション使用
図面確認、鋼材への罫書き 25分 70分 0分
罫書きの確認 5分 10分 0分
鋼材への切り板仮付け 15分 15分 15分
切り板仮付け確認 5分 5分 0分
合計時間 50分 100分 15分

有償トライアルを提供開始

Microsoft HoloLensを活用した本ソリューションは、現在有償にてトライアルの提供を開始しています。

初回時の募集では、埼玉県秩父市に拠点を置く株式会社清水スチールを含めた計5社にソリューションを提供することが決定しています。

有償トライアルの期間は2018年6月1日(金)~9月30日(日)までを予定しており、商用サービスとしての一般提供は、2018年10月1日(月)~を予定しています。

料金体系は初期費用として、MRデバイス本体を含めて1台につき600,000円、また導入時のセミナー費用として1回につき100,000円となります。

ソリューション利用時の月額費用は、Webサービス、MRデバイスアプリ利用料として1か月100,000円となります。

(料金はすべて税別、セミナー費用に交通費は含みません。また、予定料金のため変更となる可能性があります)

まとめ

製造業にMRを取り入れることによって、これまでは何十年もの経験を積まないと培うことのできなかった専門スキルを、短時間に、かつ効率的に習得することが可能になります。

ビジュアルを活用した直感的な操作で習得できるので、誰でも抵抗感なく取り組むことができそうです。

2017年にグーグルグラスがエンタープライズ向けにリニューアルしましたが、製造業や建築など、現場での作業においてMR技術を活用するトレンドは今後盛んになっていきそうです。

VRヘッドセットに比べると、現在はまだ価格が高いMRデバイスですが、今後技術が進歩するにつれてデバイスはより高性能になり、かつ低価格になります。作業時にスマートグラスやMRデバイスを装着することが当たり前になる世界は、そう遠い将来のことではないのかもしれません。

【関連リンク】
有限会社宮村鉄工のプレスリリース
有限会社宮村鉄工
NTTドコモ「39works」





フリーランスの翻訳ライター。XR、VTuber、人工知能を専門に各種メディアに寄稿しています。 Twitter: https://twitter.com/dsiwmr

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